流れる星を見逃さないで

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〆．



「流星おかえり、はやかったなー」


靴箱と正門の真ん中にある駐車場。


今は校舎が改修工事の最中で、見慣れない車が何台かあっても誰も気にとめない。


工具がたくさん積み込まれた車に囲まれて、その黒い車は存在感を無くしていた。


「……あれ、ほっぺた両方赤くなってるけど、何かあった？」


耳に揺れる羽根の形のピアス。白いキャップを脱いだ彼は、私を一瞥して呆れたように笑った。


「流星、何かやらかしたん？」


「やって、可愛かってんもん」


恐らく、流星と呼ばれた彼の、頬が赤い原因を察したのだろう。


「はあ………ごめんな？」


「あ、いえ……」


「とりあえず乗って、あんまり遅いとお父さん中まで来てまう」


なんだか素っ気ない言葉とは裏腹に、彼は優しい笑みを浮かべていた。




星と、羽根。


二人の耳で輝きを放つそれを、ぼーっと眺める。


羽根の彼は車のエンジンをかけると、眼鏡を取り出した。


よく似合っている。


「……………なあ」


「え？何？」


どう考えても年上だろうけど、なんとなく敬語を使うのが躊躇われる。


星の彼は、なんだかあどけなさが残っているようにも見えた。


「神ちゃんばっか見すぎ」


「神ちゃん？」


羽根の彼のことか。


「わからなくなるから、いい加減名前教えてよ」


「せやな、無事学校抜け出せたし、ええか」


星の彼は私の方にぐっと体を寄せてくる。


また唇が触れてしまいそうな距離で、言葉を紡いだ。


「藤井流星です。流れる星で流星。あれは神山智洋、神ちゃんな」


「あれ言うな」


二人のやりとりから察するに、相当仲がいいんだろう。


「………流れ星だから、私のお願い叶えてくれるの？」


「自由になりたいって？」


「うん」


「せやな……。流れ星に、ちゃんとお願いできたからな」


「お願いじゃなくて、約束をしたんだよ」


「細かいことはええの」


また、危うく唇を奪われそうになったけど、急ブレーキがかかったおかげで藤井さんの顔が離れていった。


「うわああ、もうちょっとでできたのに！神ちゃんのあほ！」


「いや、しげのこと轢きそうになった」


「はあ？しげなんか轢いてまえや」


キスを妨害されたのがそんなに不満なのか、藤井さんは暴言を吐く。


そしてすぐ、車のドアが開き、黒髪の男の人が助手席に乗り込んできた。ピアスはしていない。


「ちょうど良かったー！」


きっと、彼も仲間なんだろう。



〆．

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