流れる星を見逃さないで

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〆．



「わああ……！」


海を見て目を輝かせ、砂浜を駆けるA。


「流星さん！本当に海って大きいね！」


砂浜についた足跡、


波の音、反射した光。


いつも一人で眺めてたものは、そこにAが加わることで、全然違う景色に見えた。


「ねえねえ、貝殻って波の音がするんでしょ？」


小さな巻貝を拾って耳に当て、「海の波か貝の音かわかんない」とニコニコ笑ってる。


「本当に嫌なこと忘れられそうだね」


綺麗な横顔。


やっぱり俺は、君を手放したくない。


やっと、俺のそばに来てくれたんやから。




「はい」


「ありがとう」


自販機で飲み物を買う。


Aは自販機を利用したことがないらしく、小銭を渡すと楽しそうに笑った。


「ボタン押してすぐ出てくるんだね」


人は、世間知らずのお嬢様やとでも言うんやろうか。


それなら俺が、Aにいろんな景色を見せてやる。


「自販機は飲み物だけやないんやで」


「そうなの？」


「近所にあるから、また連れてったる」


小さなことにも大きな反応を見せてくれる。


Aを知る度、俺はAに惹かれていった。




「海はな、ロマンチックな場所でもあるんやで」


「へぇ……」


「恋人が海に来たら、大抵こうする」


隣で首を傾げるAに、キスを落とす。


「…………っ、流星さんキスしすぎ……。私たち、恋人じゃないよ」


「じゃあ、なる？」


「え？」


「俺は、Aのこと好きやし。キスしたいし。恋人になる方が、俺は幸せ」


Aの頬が紅くなっていって、俺は息をついた。


「……ごめんごめん。Aが俺のこと好きになったら、いつでも言うて」


会ってまだ二日目やからな。


「そろそろ帰ろ、昨日約束した通り、今日の晩はハンバーグやで」


左手を出すと、控えめに右手が重なる。


「神ちゃんがなー？流星に料理さすん怖いわーって」


「確かに」


「嘘やん」


Aもかー、と落ち込んだふりしたら、「味はわかんないけど気持ちはこもってるんでしょ？」といたずらっぽい笑みを浮かべる。


この子、策士やな。


「当たり前」


誘拐のことは警察も知ってるやろう。


マスコミにAの顔や名前が公表されんということは、その分警察関係者全員にAのことが通達されてるはず。


捜査員は全力でAを探すやろうから、迂闊にAを連れて出かけることはできんくなる。


自由を約束したはずやのに、ごめんな。



〆．

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