. 236話 神野の悪夢22 ページ10
｢───ｯｯ止めるんだ!!｣
轟々と勢いを増し続ける青炎が都市を包み込む。ヒーローの活躍により市民の避難が完了していたことが不幸中の幸いではあるが。
確かな憎悪だ。オールフォーワンを殺す、最早それ以外眼中に無い。男と鬼は互角以上、いや…男の方が押されていると言ってもいい。
だが、少女が先に限界に達するのは誰から見ても明らかだった。
｢A少女ｯ!!
このままではｯ…君が!!｣
オールマイトが正気を取り戻させようとするも近付くことすら叶わない。
「…ｯｯ…、…」
炎を纏い迫る鬼に男が手を延ばした瞬間、掌から伸びた鞭のようなものが彼女を空中で縛り上げる。
｢──素晴らしい｣
男は恍惚とした眼差しを向けながら声を漏らした。一方鬼は力任せに拘束を解き、再び地に足を着ける。
燃え盛る蒼炎の中心で白く輝く一筋の光、ルビーの如く煌めく瞳。誰もが恐怖の中で確かに存在する美しさに魅入られる。しかし、
｢───A、少女。｣
オールマイトはこれまでずっと、彼女が心から笑える瞬間を待ち望んでいたのだから。
───彼女は嗤っていた。
轟々と炎が音を立てながらうねる中、耳をすませば聞こえてくる。破滅を唄い嗤う少女の声が。
その声が彼の心を痛め付けるのだ。その度に己の無力さを突き付けられるから。
一瞬でも目を離してはいけないと思っていた。それでも何処かで彼女は強い、きっと大丈夫だと慢心があった。
何も気付いてやれなかった。
何もしてあげられなかった。
自分から話してくれるまで待つべきだと、自分が何も出来ない無力さから目を背けていただけだと痛感する。
哀しみも苦しみも1人で全部背負い込んで、苦しんで。彼女はそうやって1人で闘ってきた。
その限界が来た。はなから少女が1人で抱えこんでいいものでは無かったのだ。
このまま彼女が止まらなければ、過去の大惨劇─鬼人のヴィランによる都市の壊滅をなぞることになる。男の思い通りになる。
そして彼女の尊い命を犠牲にして、炎は収まるのだろう。
それだけは決して許されない。彼女の帰りを待っている人間がいる。かけてやらなきゃならない言葉がある。
でもどうやって。
彼女を覆う厚い炎の壁が行く手を阻む。そこに辿り着けるのなら死だって苦じゃない。
だがそれでは駄目なんだ。彼女を助けるために自分が死ぬ事は許されない。
自分を命を懸けて守ろうとしてくれた人間に、さらなる地獄を見せるだけだから。
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マヨケリ(プロフ) - コメント失礼します🙇ほんとに面白くて一気に読んでしまいました！！ (4月22日 20時) (
レス) id: 25632ac130 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン - いつも楽しく読ませていただいています！個人的に夢主がめちゃくちゃ好きです！続き楽しみに待ってます！ (3月29日 19時) (レス) id: 4501a4fd46 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - あめみやさん» 読んでくださってありがとうございます。あめみや様のような応援コメントにいつも励まされています☺️ (11月13日 8時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 久しぶりに見たら神野の悪夢編終わってて目が飛び出しました！これからもご自身のペースで更新頑張ってください！！ (11月11日 19時) (レス) id: dd94fd2279 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 司さん» ありがとうございます^^自分でもこの先どうなるのか分からなくなってきましたが完結までは必ず持っていきます! (9月16日 13時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイ | 作成日時：2023年7月25日 18時
