. 260話 切島鋭児郎 ページ34
ふと目が覚めたのは、夜明けの光が部屋に差し込み始めた頃だった。
せめてアラームが鳴るまでは、と目を閉じたが眠りにつくことは出来ず部屋を出た。
何時もは騒がしい寮のロビーも、人が居なければ静まり返っている。昨夜も飯田の誕生日会だったし。
そういや仮免終わった頃には神崎の──
ﾊﾞﾝｯ
洗面所の方で大きな物音がしたため足を向けた。顔だけ覗かせてみれば、神崎が洗面台に両腕を付いて立っていた。さっきの音は一体何だったのか。
『───神崎?』
「！…っ、」
その声に驚いたのか、後ずさった足を取られて倒れ込みそうになった彼女の腕を咄嗟に引き寄せる。
『…怪我ねぇか?』
「だい、じょうぶ。ごめん、驚いて」
『いや、こっちこそ悪ぃな。いきなり声掛けちまった』
聞けば先程の音は段差に躓いて洗面台に手を付いた時の音だと、彼女は決まりが悪そうに話した。そんな目立つような段差はなかったはずだが…
『俺はたまたま目ぇ覚めちまっただけだが…まだ5時前だぜ?いつもこんな時間に起きてんのか?』
「ううん、今日だけ。眠れなくて」
だからこのまま起きてるつもりだと、神崎はロビーのソファに腰掛けた。俺は水を飲むつもりでキッチンに向かった。
『にしても…らしくねぇな。疲れた顔してるし、無理すんのも程々にな』
コップに水を汲みながらそう放った言葉に、それ以上の意味を込めたつもりは無い。いつも完璧な彼女が転びそうになった、それが意外だったから。
中々返事が返ってこないもんだから顔を上げて「…神崎?」と名前を呼んだ。
「……ねぇ」
彼女は窓の外を見ていた。
「切島が考える強さって、なに?」
らしくない質問に動揺したのは一瞬。自分と向き合い理想を追う日々だから、言葉は意外にもすんなりと出る。
『強さってのは人それぞれだと思うが、……俺は、決めた事を貫き通す曲がらねぇ心だと思う』
「……そう」
目を伏せた神崎にそれ以上何も言えなかった。
今、神崎は自分と向き合っているんだろう。これからどう歩みを進めていくのか、そんな大事な時間。
俺なんかの言葉でも、少しぐらい助けになればいいと思っていた。
俺はお前を強いやつだと思ってた。そして、強いなりの悩みがあるんだろうってこと。
それなら話くらい聴いてやりたかった。でも、踏み込まれることを嫌うのを知ってた。
何かあってからじゃ遅ぇんだってことも、分かってたはずなんだ。
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マヨケリ(プロフ) - コメント失礼します🙇ほんとに面白くて一気に読んでしまいました！！ (4月22日 20時) (
レス) id: 25632ac130 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン - いつも楽しく読ませていただいています！個人的に夢主がめちゃくちゃ好きです！続き楽しみに待ってます！ (3月29日 19時) (レス) id: 4501a4fd46 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - あめみやさん» 読んでくださってありがとうございます。あめみや様のような応援コメントにいつも励まされています☺️ (11月13日 8時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 久しぶりに見たら神野の悪夢編終わってて目が飛び出しました！これからもご自身のペースで更新頑張ってください！！ (11月11日 19時) (レス) id: dd94fd2279 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 司さん» ありがとうございます^^自分でもこの先どうなるのか分からなくなってきましたが完結までは必ず持っていきます! (9月16日 13時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイ | 作成日時：2023年7月25日 18時
