. 258話 耳郎響香 ページ32
『──神崎、少し話がしたいんだけど』
前を歩く彼女にそう声をかければ、足を止め身体ごとこっちに振り返ってくれる。
入学当初ならきっと｢…なに?｣だとか、警戒心を隠さずに反応してただろうな。でも今は、
｢今?いいけど、場所変えようか?｣
なんて言うものだから。彼女が変わったことがしみじみと感じられて、それだけで嬉しくなってしまうんだ。
人が多い所は憚られるけど、個性訓練があって皆疲れて部屋に戻ったみたいで。数人が残る寮のロビーに腰掛けた。
『はぁ〜…今日もがちでキツかった』
｢そうだね。先生方も仮免試験に向けて気合入ってるみたいだったし｣
『神崎はどう?必殺技』
｢形だけは決まったって感じ。
……耳郎の、すごくいいと思う。ああいう発想もあるんだなって｣
『え、ありがと……普通に嬉しい』
お風呂から上がってきた瀬呂とかの男子がテレビを見始める。同じロビーでも広いから少し離れてるのに、いつの間にか始まったリモコン争奪戦で結構うるさい。
ふと視線をやると、それを見ていた神崎が柔らかい表情をしていた。
『……大した話じゃないんだけどさ。合宿の時のこと、どうしてもちゃんとお礼が言いたかったんだよね。
助けてくれてありがと、ほんとに』
｢……いいよ別に。そんな大層な事してない｣
『、そういうと思ってた。あんたらしいけどさ、感謝してるんだまじで。
…あの時は何が起きてるか分かんなかったし、身体動かないし葉隠も気失っちゃって怖かった』
｢……｣
『それでもあんたが見つけてくれたから』
『──だから、ありがと!』
ニッと笑ってそう言えば、神崎は驚いたように目を見開かせる。
本当は謝りたかった。自分を助けたせいで彼女がヴィランの前に晒されてしまったんじゃないかって思ってたから。
けど、謝って欲しくて助けてくれたんじゃない。お礼欲しさでも無いだろうけど。
｢───……うん、｣
小さく彼女が頷いた。
それから、明日も朝早いからと早々に分かれて部屋に戻った。今日、久しぶりに話せた気がする。
この頃、様子が変なのは薄々感じていた。合宿にしろ神野にしろ、色々あって疲れが溜まっているのもあるんだろう。
でも、それ以上に──
お返しってわけじゃないけど、何かあるなら。自分に出来ることがあるならなんでもしてあげたいなって、そう思ってた。
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マヨケリ(プロフ) - コメント失礼します🙇ほんとに面白くて一気に読んでしまいました！！ (4月22日 20時) (
レス) id: 25632ac130 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン - いつも楽しく読ませていただいています！個人的に夢主がめちゃくちゃ好きです！続き楽しみに待ってます！ (3月29日 19時) (レス) id: 4501a4fd46 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - あめみやさん» 読んでくださってありがとうございます。あめみや様のような応援コメントにいつも励まされています☺️ (11月13日 8時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 久しぶりに見たら神野の悪夢編終わってて目が飛び出しました！これからもご自身のペースで更新頑張ってください！！ (11月11日 19時) (レス) id: dd94fd2279 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 司さん» ありがとうございます^^自分でもこの先どうなるのか分からなくなってきましたが完結までは必ず持っていきます! (9月16日 13時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイ | 作成日時：2023年7月25日 18時
