. 251話 優しい人 ページ25
日が傾きはじめている。辺りはオレンジ色に包まれて、私たちは並んで校門への道を辿っていた。
彼の低く落ち着いた声が、今はただ心地良い。
──あの夜、轟たちは神野に訪れていたそうだ。爆豪と私を助けるために、彼ら自身に出来ることをやり遂げてしまった。
そして、敵の個性により私の複製が作られていたことも相澤先生から聞いた。
一時は爆豪と私を連れてあの現場から脱出を果たしたらしい。目覚めたのはあの現場だったから、私は何も知らなかったのだ。その空白の時間に何があったかなんて。
だからこそなのだろう。
この時、轟の様子の違和感に気づけたのは。
気付けば轟は立ち止まっていて、振り返って彼の名を呼べば、ゆっくりと顔を上げた彼と視線が交わる。
よく分からない顔だった。不安そうで、決まりが悪いようで、それでいて苦しそうな。色々な感情が混ざりあったような複雑な表情を浮かべていたのだ。
｢“──なにかあったの?”｣
なんて、聞けるはずがなかった。何かがあったことなんて分かりきってる。それに、何となく予想は着いていた。彼をこんな顔にさせる私の言動について。
私は一体、この人にどこまで話してしまったのだろうか。今、何を告げるのが正解なんだろうか。
ただ、言えることがあるとしたなら。
『……轟、
───助けに来てくれて、ありがとう』
彼は面食らった顔をした。
｢……悪ぃ。
礼を言われるの、2回目なんだ。
…少し、覚えててくれたら良いなって…期待してた｣
『…聞いたら、教えてくれるの?』
｢勘弁してくれ。…情けねぇことに、自分でも整理出来てねぇんだ｣
過去の私は、なんて馬鹿な真似をしたんだろうか。隠さなきゃならない片鱗を、よりによってこの誰よりも優しい人に見せてしまった。
『何を聞いたか知らないけど、…気にしないで。あんたがそんな顔する必要ない。
私は、大丈夫だから』
｢…嘘だ｣
『どうしてそう思うの』
轟が私の手首を掴んで、真っ直ぐな目を向けてくる。少し、泣きそうに見えた。
｢お前が…自分を隠すのが上手い奴だって知ってるからだ｣
『…そう。でも、誰にだって隠し事くらいあるでしょ?』
轟なら、この言葉に含まれる意味が分かるはずだ。他人に干渉して欲しくない、踏み込まれたくない部分は誰にだってある。
かつての轟がそうだったように。
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マヨケリ(プロフ) - コメント失礼します🙇ほんとに面白くて一気に読んでしまいました！！ (4月22日 20時) (
レス) id: 25632ac130 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン - いつも楽しく読ませていただいています！個人的に夢主がめちゃくちゃ好きです！続き楽しみに待ってます！ (3月29日 19時) (レス) id: 4501a4fd46 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - あめみやさん» 読んでくださってありがとうございます。あめみや様のような応援コメントにいつも励まされています☺️ (11月13日 8時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 久しぶりに見たら神野の悪夢編終わってて目が飛び出しました！これからもご自身のペースで更新頑張ってください！！ (11月11日 19時) (レス) id: dd94fd2279 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 司さん» ありがとうございます^^自分でもこの先どうなるのか分からなくなってきましたが完結までは必ず持っていきます! (9月16日 13時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイ | 作成日時：2023年7月25日 18時
