. 249話 迷い ページ23
どくどくと波打つ心臓を抑えた。
彼らに個性を告げられずにいたのは、過去のトラウマに縛られていたからだ。
ある日を境に向けられるようになった刺すような視線。黒板に書かれた私への言葉。身体につけられた傷だって。
未だに何も消化出来ずにいたから。
卒業はあまりにも救いにはならなかった。身体の傷は治れどほかは何も変わらない。
ずっと不完全燃焼のような状態なのだ。私の中であの出来事は、まだ終わってないのだから。
だから…鬼の姿の私を見て、彼らがどう思うか知りたくなかった。感情に任せて私の中に棲みつく鬼に全てを委ね、私はあの地を燃やし尽くした。
恐ろしい、そんな目を向けられるのが怖かった。けれど同時に、そうされるだけで吹っ切れるならそれでも良いと思っていた。
心に生まれた淡い期待を、膨れ上がる前に摘む事が出来るのなら
それ以上の救いは無いから。
──けれど、彼らの態度は普通、
それ以上でもそれ以下でも無かった。
合宿前と何も変わらない至って今まで通り。それはそれは、ずっと悩んでいた時間が全部無駄だと感じたくらい。
今日私が退院し、学校に足を運ぶことは事前に先生から聞いているようだった。初めて踏み入れる寮のロビーで彼らはずっと待っていたのだ。
他でもない、私の帰りを。
おかえり、無事でよかった。
心の底からそう思ってるみたいな表情で、彼らはそう言って。他は何も言わなかった。
きまりが悪いような顔を浮かべた私を察してか、彼らはすぐに話題を変えた。寮での話や私が居ない間にあった出来事。身体はもう平気なのか、とか。部屋王を決めたこととか。
気が付けば日が傾き始めていた。
八｢─Aさん。今日はご自宅にお戻りになるのですよね?｣
『…あぁ、うん。そのつもり』
上｢あー、んならそろそろお開きか…あんまり遅くなると危ねぇもんな｣
芦｢えー1日ぐらい泊まってけばいいじゃん!どうせすぐに寮に入るんだし｣
芦戸の言葉に何人かがナイスアイデア、と賛同した。私は開きかけた口を噤む。なんと言えばいいか、分からなかったから。
『今日は帰るよ。気 遣わせるし』
瀬｢それは誰も気にしねぇと思うけどな。まぁでも、家帰って休んだ方がいいぜ?まだ本調子じゃないだろ｣
麗｢うん、私もそうした方がいいと思うよ｣
『…ありがとう』
そう言って下ろしていた腰をあげる。
そして、
｢それで、いつ寮に入るんだ?｣
誰かが、そう言った。
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マヨケリ(プロフ) - コメント失礼します🙇ほんとに面白くて一気に読んでしまいました！！ (4月22日 20時) (
レス) id: 25632ac130 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン - いつも楽しく読ませていただいています！個人的に夢主がめちゃくちゃ好きです！続き楽しみに待ってます！ (3月29日 19時) (レス) id: 4501a4fd46 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - あめみやさん» 読んでくださってありがとうございます。あめみや様のような応援コメントにいつも励まされています☺️ (11月13日 8時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 久しぶりに見たら神野の悪夢編終わってて目が飛び出しました！これからもご自身のペースで更新頑張ってください！！ (11月11日 19時) (レス) id: dd94fd2279 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 司さん» ありがとうございます^^自分でもこの先どうなるのか分からなくなってきましたが完結までは必ず持っていきます! (9月16日 13時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイ | 作成日時：2023年7月25日 18時
