. 238話 神野の悪夢24 ページ12
｢───……だれか、たすけて…｣
小さく漏れ出た救いを求める声は、深々と降り積もる雪に掻き消されていった。
まだ幼かった私は知らない世界に1人取り残されたようで、ずっと心細かった。
初めて父さんに反発したのがこの日だった。
周りの子達が放課後、友達同士で遊んでいる時間、どうして私はやりたくもない訓練を付けられてるのか理解できるはずもなく。
喧嘩になって家を飛び出してきたのだ。
1人で外に出たことがなかった私にとって、知らない場所ばかりの街が新鮮で、気が付けば後戻りの出来ない所まで来ていた。
辺りは暗くなり始め、気温も一気に下がる。無慈悲にも雪が降ってきて、手も鼻も耳も真っ赤になってかじかむ。
段々と身体が動かせなくなっていって。辿り着いた何処かの山の麓、鳥居の前でしゃがみ込んだ。
私は昔からあまり泣くことが無かった。
けれど助けを求める声が誰にも届くこと無く消えていった瞬間、不安と恐怖が一気に押し寄せ大粒の涙を流した。
｢……泣いてるの?｣
不意に上から降ってきた声にびくりと肩を揺らしてから、恐る恐る顔を上げた。
私と同じ白い髪と海のような優しい青色の瞳。その2つの宝石は私を心配そうに見つめて揺れていた。
｢階段降りてる途中で、声が聞こえた気がして走って来たんだ。
……迷子、だよな…
とりあえず、立てる?
そのままじゃ身体が冷え切っちゃうよ｣
涙は最早止まっていた。
ぎこちなく差し出された、自分の手よりも一回り大きなそれを取る。胸が締められるくらい暖かい手に、私は再び大粒の涙を流した。
そんな私を見て彼は穏やかに笑ったんだ。
｢1人でつらかったよな
…でももう大丈夫。
俺が、助けてあげる｣
燈矢くんは安心させるように私の頬を撫でてくれた。その手付きはやけに慣れていて。妹か弟が居たんだろうな、と今更ながら思う。
──今思えば、これはきっとなにかの運命だった。引き寄せられるように、私たちは出会うべくして出逢った。
この日の景色を、感情を忘れるはずが無い。
“Aって好きな人いないの?”
誰かに聞かれたことがあった。その時一番に思い浮かんだのは何故か燈矢くんで。
泣いている私を一番に見つけてくれた人。
手を離さずに引っ張って歩いてくれた、優しい人。
たった一人の、私だけのヒーロー。
───あぁ
私、きっと
彼と出会ったこの日から、ずっと…燈矢くんのことが好きだったんだ。
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マヨケリ(プロフ) - コメント失礼します🙇ほんとに面白くて一気に読んでしまいました！！ (4月22日 20時) (
レス) id: 25632ac130 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン - いつも楽しく読ませていただいています！個人的に夢主がめちゃくちゃ好きです！続き楽しみに待ってます！ (3月29日 19時) (レス) id: 4501a4fd46 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - あめみやさん» 読んでくださってありがとうございます。あめみや様のような応援コメントにいつも励まされています☺️ (11月13日 8時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 久しぶりに見たら神野の悪夢編終わってて目が飛び出しました！これからもご自身のペースで更新頑張ってください！！ (11月11日 19時) (レス) id: dd94fd2279 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 司さん» ありがとうございます^^自分でもこの先どうなるのか分からなくなってきましたが完結までは必ず持っていきます! (9月16日 13時) (レス) id: 4d64a1450f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイ | 作成日時：2023年7月25日 18時
