惚れるわけではないけれど。 ページ9
your side
思い出したのはついさっきの事。
会話の途中で、曇っていた思考がクリアになったみたいに思い出した。
あんな一言で見抜けたゾムさんに大きな尊敬の意を抱いた。
そもそも這い寄る脅威は尊敬している人物だったけど。
『兄さん、兄さんに言わなきゃ』
思い立ってベッドから降りようとしたが、当然抑えられてしまった。
zm「グルッペンなら呼んでくるから待っててや」
まぁどのみち普通に殴られた頭部は痛いのでお言葉に甘えておく。
ゾムさんは医務室を飛び出していき、ぺ神さんは顔を歪めた。
ps「なんで、すぐ隠すん。これでも俺、軍医やから、皆の体調管理するのが仕事なんやけど」
怒ってはいない。只、悲しんでいるのだ。
いや、悲しんでくれているのだ。
たかが女一人の為に。
『私なんかの為だけに、そんなに時間をかけて貰わなくて大丈夫ですよ。』
ごめんなさい、我儘で。迷惑掛けて。
もっと私が良い子だったら良かったかな。
笑って言えば、更に顔を歪ませた。
ps「私なんか、ちゃうねん。もう仲間やと思ってるから、安心して頼って、背中預けて。」
拳を震わせ言うぺ神さんは私の頭をそっと撫で、窓を開けた。
ふと、ドアの方向に気配を感じた。
gr「A、そういう時は普通にありがとうで良いと思うぞ。黙って甘えてろ」
兄さんは大股で私のいるベッドに近づき、抱きしめた。
『ありがとう、ございます…』
久しぶりに嗅いだ兄の匂いになんとも言えない気持ちが込み上げてくる。
ぺ神さんは嬉しそうに笑い、また視線を窓に戻した。
zm「8年越しの兄妹の再開、って感じやな」
ゾムさんはひひ、と笑うと、そそくさとダクトに入って行ってしまった。
gr「A、おかえり」
『兄さん、ただいま。』
窓から差し込む光が、私より少し色素の薄い兄さんの髪に反射し、キラキラと輝く。
兄さんはどこかのお伽噺に出てくる王子の様にも見える。
惚れるわけではないけれど。
ps「はーい総統さん、大切な妹さんが戻ってきて嬉しいのは分かったけど、仕事あるやろー」
空気になってしまったのが嫌だったのか、ぺ神さんは兄さんを医務室から押し出し、椅子に座った。
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作者名：はぁな。 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年4月17日 14時
