第7話 『乾杯』 ページ7
その夜、山本とリオが訪れたのは、彼の行きつけの店──そう、居酒屋だ。
彼にとってはリオとの初デート(?)だが、いつも通り接するには格式の高い店は厳しいと判断し、居酒屋にしたのだ。
「何名様ですか?」
「あ、2人です」
山本は店員の対応にそう答え、リオとともに案内された席に座った。
「何頼む?」
「あ、生ビールで」
「じゃあ俺も。あとは、枝豆…とか?」
「そうですね」
初めて出かける相手、しかも男なのに、初っ端から生ビールを頼む彼女に驚いた。
(気ぃ許してくれてるってことかな)
そうは言っても頼んでいた品が届くまで、何を話せばいいのか分からず互いに無言を貫き通してしまった。
「お待たせしました。こちら注文の品です」
「ありがとうございます」
思っていたよりも早くきた。
少しだけほっとした。
山本が切り出した。
「じゃあ…」
『乾杯』
カチンと2つのジョッキをぶつけ、同時に勢いよく1口目を飲んだ。
「っはぁー」
生ビールを飲むとそう言ってしまうのは定番といったところか。
その点、彼女は何も言わずにジョッキをテーブルに置いた。
実のところ、山本は普段ほとんどお酒を飲まない。
しかしアルコールでも入らないとリオは彼に対して素で話してくれないと思い、生ビールを頼んだのだ。
山本も少し酔ってきたようで、身の上話をし始めた。
しかし彼女はそれを聞くだけで、自分の話を全くしない。
もしや、酔っていないのではないか。
そう思いつつも、会話を途切れさせたくない彼は、リオに話題を振った。
「なぁ」
「はい?」
「す、好きな ……」
「好きな?」
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作者名:リオ | 作成日時:2023年3月13日 14時