手帳 ページ9
Noside
暫くして、分析を終えた米沢から右京と薫に報告が来た。
「ふたつの土は成分が違いますな。まったく違う場所の土です。」
「鍵等さんは靴についた土を公園のものだと言った。
しかし、調べたところ土の成分は公園のものではなかった。
つまり、彼女は僕たちに嘘をついたことになりますねぇ。」
「えっ?あれっ?鍵等さんって…あの、鍵等さんですか?」
「はい、あの鍵等A。」
「あの、亀山さんの同期の?」
「そうですよ。」
「鍵等さんと会っていたんですか?」
「いけませんか?」
「私も鍵等さんにお会いしたかったです。」
「そういう問題じゃありませんよ。
なんで右京さん、Aの靴についてた土の成分なんか調べてるんすか?」
「気になるじゃありませんか、嘘をついた理由ですよ。」
右京は薫の質問にすぐに答えていた。
一方その日の夜、Aはメガネをかけたまま喫茶店を出た。
人気のない夜の地下道を歩いていると、背後から足音が響いてきた。
フルフェイスのヘルメットを被った男が近づいてくる。
危険を感じて振り切ろうと前を向いた瞬間、同じ格好をしたもう一人の男がいきなりAに体当たりしてきた。
Aは思わずよろめいた。
「あらら、急に飛び出してくるから。ごめん。」
ぶつかった男が形ばかり謝ると、背後の男が追いついて言った。
「余計なことは調べるな。意味はわかるな?」
『余計なことじゃなければ、調べてもいい。
そういう意味になりますけど?』
Aが挑発するように応えると、背後から来たほうの男がわざとらしく「ハッ…ハックション!」とくしゃみをし顔を殴ったのだ。
「すまん、季節外れの花粉症だ。」
「手帳を渡せ。」
最初に当たってきた男がAに迫る。
『手帳なんかありません。』
拒否するAにふたりのヘルメット男が実力行使に出ようとしたその瞬間、地下道に、「何してんだ!!」と言う声が響いた。
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Rei - いつもゆうりさんの作品を見て感動してます!!応援してます!!頑張ってください!! (10月22日 20時) (レス) @page17 id: 1ac691a90a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:反町ゆうり | 作成日時:2022年9月14日 23時