信長協奏曲 Part Ⅰ (ページ17)

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Aside

どうして武田なのかは、もうわからない。
帰蝶様のことを助けられなかったし…上手くいかない。

「もうすぐ帰蝶様が出立される頃ですな。」

「急がなくてよろしいのですか？」

「俺、何にもできなかったから。」

「しかし、信じられませんな。
あのまむしが、帰蝶様の輿入れに当たり武田に頭を下げたとは。」

…え？今のなに？どういうこと？

「サブロー、止めて。」

「A？」

「ねぇ、どういうこと？」

「戸張番が言っておったのです。
道三殿は武田家の配下に加わった上、
自分が死んだら美濃を譲っても構わぬと宣言されたと。」

「道三が…。」

あのおじさんがそこまでするってことは、なにか狙いがある？

「信長様ー！！」

遠くから聞こえたのは、馬に乗ってきた恒興様の声。

「常ちゃん！」

「大変なことが…伊勢で、城の台帳を盗もうとした者がおり、
捕らえられたのです。」

「え？何の話？」

「それが、その男は美濃の忍びだったのです。」

「「美濃の？」」

「道三殿の支持によるものということか？」

「しかも伊勢だけでなく、方々の台帳も盗み取るようにと。」

なにか引っかかる…おじさんは、何かを探していた？
台帳と言えば、人の名前が乗っている資料のようなもの。

「じゃあ、うちの台帳も？」

「おそらく。」

「いったい、よその国の台帳など何のために？」

「なんでも、その台帳で帰蝶様の輿入れ先を探していたとか。」

よその国の台帳で？
…ってことは、有名な戦国大名の名前を探してたとか？

「は？」

「そんなはずはなかろう。」

「確かに、伊勢でも誰も信じられなかったそうです。」

「どうせその場限りの戯言を申したのであろう。」

戯言か…そんなんで、よその国の台帳盗むか？普通。

「しかしその忍びもその場でよう思い付きましたな。
”とよとみひでよし”とか”とくがわいえやす”とか言う名前を。」

…え、すっごい聞いたことある名前なんですけど。