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Aside
「これは今、映写機にかかってる"殺人鬼スコーピオン"のフィルムの端っこだ。
何だっけ、おっさん。このフィルムの名前。」
「あぁ…スプライシングテープだ。
フィルムをつなぎ合わせる時のやつな。」
「そうそう、そうそう。あの時、
このテープはフィルムを留めるためにくっついてた。
…と思ったけど、このテープに付いてたのはこの鍵だよ。
これをこうして…床に置けば…。」
はじめちゃんがテープに鍵を付けて、床に置く。
そのタイミングで映写室に居る佐木君に電話をかけた。
「佐木くん、映写機のスイッチ入れてくれる?」
「あっ、はい。」
「あっ。」
テープにくっ付いた鍵が、
スイッチを入れたタイミングでそのまま引っ張られていく。
「この部室棟のドアの下には少し隙間がある。」
「なんだ、これ。」
「見て。これが二重密室のトリックだよ。」
ドアの下を鍵が通ったタイミングで、はじめちゃんが扉を開け、
外の様子が確認できる。
「映写機は、フィルムの先に付いた鍵を運ぶための動力源として使われてたの。
そして死体の周りに置いてあるろうそくは、フィルムを映写室にうまく運び入れるためのガイドとしての役割を果たしてたんだよ。」
「こうやって映写室に運ばれた鍵は自動的に蔵沢先輩の死体に握られる。」
映写室の扉の下をくぐった鍵は、そのまま進んでいく。
くぐったタイミングで扉を開けたはじめちゃん。
「あっ、お〜おっ。」
「ちょっと…見えないんで、ごめん、見えない!
腕時計の中にフィルムが通ってる。」
「お〜。」
「蔵沢先輩のベルトがいつも留めてある穴じゃなくて、
一番外側の穴に緩めに留めてあったのは、このフィルムを通すためだったの。
真壁先輩。ポアロがこの謎を解くヒントをくれたんです。」
「ポアロが?」
「ポアロはあの時、蔵沢先輩に吠えてた。
部長、ポアロってラベンダーの匂いが大嫌いなんですよね?」
「あぁ。」
「あの時、ポアロが吠えてた本当の理由は鍵についたラベンダーの匂いを嫌がってたからなの。」
今回ばっかりは、ナイスだったよ、ポアロ。
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作者名:反町ゆうり | 作成日時:2022年2月27日 8時