おはよう人間【鬼滅の刃】

みそ　あまり　ふたつ ページ32

「こっち。ここが僕がいつも居る部屋。ちゃんと覚えてよ、姉さん」



『うん』



下弦の伍、累。私の弟…という設定
私の着物の裾を引っ張りながら家を案内してくれる

なぜ私が家族ごっこに付き合っているかというと
ただ単に、寂しそうに見えたから

鬼特有の威圧感を放ちながらも、普通の子どものような幼さがある

なんだか放っておけなかった



「あぁそうだ、他の家族に会わせる前に見た目をどうにかしなきゃ」



『見た目？』



「うん。僕達家族は僕にそっくりだ。なのに姉さんだけ見た目が違うのは納得いかない。そんなの家族じゃない。……鬼だったらやり方は簡単だけど…姉さんは人間だから…これを着て」



そう言って私に渡したのは蜘蛛の巣の柄が施された着物

累くんが着ているものと似ている



「あと、肌に白粉を塗って。紅で僕と同じ模様を描いて。目と髪はどうにもできないけど…それくらいはできるでしょ。じゃあ僕は部屋の外で待ってるから。」



累くんはそそくさと部屋から出て襖を閉めてしまった


部屋を見渡すと、ひびが入っている鏡の横に白粉と紅らしきものがあった

とりあえず言われた通り白粉を塗る
足や腕、顔、首などにまんべんなく塗った
少し白粉が固まってしまっていたけれど、なんとか綺麗にできたからいいだろう

次に累くんと同じような模様を紅で書く
先程から特徴的な模様だと思って見てたから形は覚えている
少し汚くなったが私にしてはうまくいった

渡された着物に着替え、帯を締める
帯締めは玉壺から貰ったものを使った

……何気なく愛用してる気がする



『…累くん、どう?こんな感じかな。少し不格好になっちゃったけど』



「うん、さっきよりいい。本当の家族になったみたいだ」



『……なら良かった!』



「じゃあこっち、ついてきて。僕の家族のところに」



『わかったわかった!ついていくからそんなに引っ張らないで!転けそうだよ』



「………」



…え?無視??
酷くないか弟よ。

……そして、さっきから思ってたけどこの子、すごく家族に執着してる…見た目にも

家族に見た目ってそんなに大事?
心から親愛し合えて支え合っていくことができれば家族だと思うけど

………何かあったのかな



「ここだよ。この部屋に僕の家族がいる。
……聞いてる?」



『え?…あぁごめん!考え事しちゃってた』



「しっかりしてよね。僕の姉さんなんだから」



『うん。ごめんね、しっかりする』



私がそう言うと累くんが部屋の襖を開けた
そこには累くんの家族、鬼が座っていて
全員が私を見るなり驚いた表情をした

そりゃそうだ、私は人間ですもの

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