おはよう人間【鬼滅の刃】

とお　あまり　ななつ ページ17

力無く伸ばされた華衣さんの手は私の方を向いていた





「………た、たす………助け………」




「うーん、Aちゃんが君を助けられるとは思えないなぁ…力が無いし

でもいいじゃないか!今俺が救っているだろ?極楽に導くのが俺の努めだからな」







『………童磨様、私、同じ人間を見殺しにできないです』








なぜこうなるかもしれないと思ったのに止められなかったんだろう

数刻前まで同じ空間にいた人間が目の前で死んでしまうのは耐えられない






童磨の腕を掴む
離してもらうように、華衣さんを生かしたいが為に






「………Aちゃん?
目を背けたくなったら逃げていいと言ったはずだぜ?」



『………………』







あぁ、そうか

私の手が震えているからか



力が入らず腕を動かすことすらできない






「……凄いよ!力が弱くて助けることができず無意味なのに…
自分を罵った相手さえ助けようとするその姿勢、俺は感動した!
Aちゃんは頑張った!偉い!!」




華衣さんを抱き止めていた腕をほどき私の両手を握る

また涙を流しながら



当然、華衣さんの体は床へと打ち付けられる
小さな悲鳴をあげて動かなくなってしまった

目を開けたまま光を失い、瞳孔が開かれる








『っ……華衣さん!!』




「あぁ、その子は華衣だったか!
やっと思い出したよ

あっ、そこに置いてて大丈夫だからね!
ちゃんと骨まで喰べて幸せにするから

さ、夜も更けているしAちゃんは無限城に戻ろうか」






人を物のように扱う姿にゾッとする

やっぱりおかしい。こんなの
どうして罪のない人が殺されるの?
どうして信じた人が意味もなく殺される?


これが救いなら自分で好きな時に死んだ方がマシだ






『…………せめて華衣さんの髪留めを貰ってもいいですか』



「ああ!構わないよ!他に何か欲しいなら遠慮なく持っていっておくれ」





そうじゃない
私は悔しいから華衣さんの私物を形見として手に取るだけで

華衣さんの物が美しいからとかじゃない



………鬼とはつくづく合わないな

価値観も食事も





手を合わせてから髪留めに触れる

蓬菊(ヨモギギク)のような色の小さなリボン


可愛らしく華衣さんによく似合っていた







『………………』




「おや、それだけでいいのかい?
満足ならいいけど………ま、人間は寝る時間だから悩んでいる暇は無いしね!
じゃ、おやすみ!Aちゃん!」







瞬きをすると自分の部屋に変わっている



今度は違って童磨の顔を見れなかった

あの綺麗な七色の瞳さえも怖かった
手を握られた時も怖くて体が震えた

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