【APH】ATLAS

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まずは、嗜みから。

これがアーサーの、紅茶を飲む前にする習慣だ。
ティーカップを持ち、口に近付ける。爽やかな柑橘系の、他の紅茶には無い独特な香り。
頭の中に、思い当たるフレーバーティーが一つ浮かんだ。

「アールグレイ、か」
「ご名答。…香りだけで当てるとは思わなかったんだけど。凄いね、あんた」
「ティータイムの国は、伊達じゃないからな」

そっと口をつけ、ぐいと呷る。
上品なベルガモットの香りとともに、しっかりとした味わいが口内に広がる。
なるほど、彼女は紅茶を淹れることが相当上手いようだ。ありがちな渋さや苦さを一切感じない。

「…合格だ」

セレーナは大きく目を見開くと、口角を上げ微笑んだ。

「ありがとう。長い間淹れてなかったから心配だったんだけど、良かった。…あ、ミルクいる？」

ああ、と了承の意を示すと、ミルクピッチャーが備え付けられる。アーサーは慣れた手つきでミルクを紅茶に注いだ。
勿論、紅茶とミルクの割合は2：1。アールグレイの風味を残しつつ、ミルクの甘さも楽しめる。まさに黄金比率なのだ。

一口含む。…あまりの美味しさにもう一口。感嘆の息が漏れる。このような紅茶は、本場イギリスでもあまりお目にかかれないだろう。アーサーの顔に、恍惚とした表情が浮かんだ。