〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ9)

今日:33 hit、昨日:24 hit、合計:322,225 hit

・ページ9

「な、なんなんだ！お前ら！」

愛しの彼が私の肩を抱き、目の前の3人を威嚇する。

彼の声にヴィンスモークの3人が反応し、こちらをユラリと向いた。

「あぁ？何だ、お前はもう用済みだ。どっか行け」

そう言ってニジは彼を押し退けて、私の手を取った。愛しの彼が何かを言っている＿＿が、その声はニジに耳元で囁かれたことでかき消された。

「綺麗になったな」

普通だったら喜ぶはずの台詞だ。

だけど私が抱いた感情は喜びとは正反対のもの。

この男は、無条件で人を褒めるなんてことしない。

幼い頃とはいえ、長くを一緒に過ごしてきたから分かる。幼い頃の性格・本質がそう簡単に変わるとも思えない。

「おい！ずるいぞ。俺にも触らせろよ」

そう言ってヨンジが私とニジの隙間に入ってくる。

「あれがお前の選んだ王子様なのか？すっげぇヒョロヒョロで弱そうだな！金も全然持ってなさそうだし、お前相変わらずセンス無ぇな」

『っ、』

私を馬鹿にするのは別に良い。
だけど、彼を馬鹿にするのは許さない…！

『そんなこと、ない！彼はすごく優しい、私の王子様なの！』

「あ？俺に口答えすんのか？んな悪いことを言うのはこの口か？」

『…あっ、ぐっ！？』

そう言うとヨンジは私の口にガッと親指をつっこんできた。
苦しくて、生理的な涙が溢れてくる。
そんな私を見てなのか、近くから3人分の笑い声が聞こえる。

いつの間にか私の左右、正面は彼らに囲まれていた。
なら背後はあいているのでは、と思うかもしれないが背中にはご丁寧にがっしりとした腕が回されている。

逃げられない。

「ヨンジ、そろそろ指抜いてやれ」

「おう。いやぁ、あまりにも良い反応するもんだからつい、な」

『……っ、ふっ、はぁ！はぁっ…』

倒れ込みそうになるのを我慢して、キッと正面の男を睨みつける。

ヴィンスモーク家長男、イチジ。

『…そんなに、私のことが気に入らなかった？大人になって仕返しをしにくるほど、私が憎かった？』

「何の話だ」

『っ私の幸せを壊しにきたんでしょ！？』

イチジは、やれやれと大袈裟に両手を開いて首を振った。

「わかってねぇな。A。お前は今も昔も俺達の事を全然わかってねぇ」

『なに……きゃあ！？』

そう言うと、イチジは私の身体を横にして抱き上げた

「俺達はずっとお前のことが好きだったんだぜ？王子様を3人も惚れさすなんて罪な女だな。お前は」