〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ45)

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・ページ45

ガッチリと押さえつけられた腕はピクリとも動かない。

あぁ、この感じ。
どんなに抵抗しても、泣き叫んでも、無駄だと分かるこの感じ。

…よく、覚えてる。

『もう人を殺すのは嫌なの…お願いルッチ。私を…殺して』

「その台詞も聞き飽きた」

俺は決まってこう答えてきたぞ。

「好きな女を殺す男が何処にいる」

そう言うとルッチは持っていた小瓶の中身を口に含んだ。

『何を…？……っあ！？』

唇が合わさる。

薬を流し込むつもり…！？

『……っふ、む…っんん』

絶対に口を開かない…！

そう思って口を必死に閉じていた＿＿＿が

『……あ、ぐっ…』

鼻を摘まれて、呼吸の手段が絶たられる。

酸素を得るには…

『…ぷ、はっ……！…っ、んんんん！？』

口を開いたその隙を、彼が見逃すはずがない。

その瞬間、舌と一緒に生温くなった液体が口を侵食してくる。

『んんんん、ふ、っん…む』

この液体は飲んじゃ駄目。
頭では分かっている。

だけど、苦しい、苦しい、苦しい…！

ゴクッ……

喉が動くのを確認すると、ルッチはあっさりと唇を離した。

『はっ…はぁ……っ、ああ……』

苦しさから解放されて息をついたのも束の間
押し寄せるのは、液体を飲んでしまった後悔。

「何、心配することはない。この薬は後遺症も残らない。ここ数日の記憶を忘れるだけだ」

『嫌…』

「目が覚めたらまたいつも通りだ」

ガクン、と足の力が抜ける。

倒れる前にルッチに受け止められ、そのまま抱きしめられた。

もはや抵抗する気力は無かった。

ルッチは満足げに笑って私の頬を撫でている。

「正義だ何だと考える必要はない」

『…誰、か』

助けを求めて伸ばした手は、ルッチの手に絡め取られた。

「何も考えず、ただ俺のそばにいろ。永遠に」

『誰か、助け…て…』

パチン

スイッチが切れたかのように意識が途絶えた。

＿＿＿＿＿＿＿

「……起きたか。俺が誰かわかるか？」

『ルッチ？ふふ、何？私がルッチを忘れるわけないじゃない』

「あぁ、そうだな。いつも一度確認しないと気が済まなくてな」

変なルッチ！と笑うと、彼もニヤリと笑った。

何か忘れているような気がしなくもないけど、でも夢の内容って起きる頃には忘れるってよく言うし気にしなくて良いか！

『よし！今日も正義のために頑張って悪人を殺そうね！』

終