〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ41)

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「大量に人間を買って、その後は何もせずに解放してる。そんなアホなことをする天竜人はいないからな。一目見ておこうと思ったんだ」

『じゃあ、一目見たのでこのままはい解散といきましょうか』

「フフフ。いくと思ってんのか？」

『思ってないあます』

別に良いじゃん。
人間買って、そのあと返品してるわけでもないし。お店としては儲かってるじゃん。

買った商品をどうしようが私の勝手でしょ。

プイッと男から顔を背ける。

「とことん天竜人には向いてないお嬢ちゃんだな」

『！！』

先程とは打って変わって冷たい声。

男は無理矢理私の顔を両手で固定して目を合わせてきた。
濃いサングラスをかけているが、至近距離だから分かる。サングラスの奥にあるのは冷たい瞳。

『……っんんん！？』

そのまま男との距離がゼロになる。

何で、どうしてキスなんか

そんなことを考える前に酸素が足りなくなって頭が回らなくなる。

『……っん、ふ、む…！』

両手両足は鎖で縛られているし、唯一動く首は男にガッチリと固定されてしまっている。

どうすることもできない。

ただただ、終わるのを待つしかできない。

酸素が足りなくなっても

混ざり合う唾液でむせ込んでも

口内を男の舌が這いずり回っても

その苦しさを、快楽を、黙って受け止めることしかできない。

『っ、はぁっ！…はぁ、はぁ』

足りない酸素を必死で取り込もうとして自然に上がる息。
男は、まだ意識が朦朧としている私の髪をガシッと掴み告げた。

「お前には天竜人である資質が足りてねぇ。王としての自覚が無い。だから偽善者になってんだよ」

『っ、偽善者で何が悪いの！』

「ムカつくんだよ。“元”天竜人としてな」

『……え』

“元”天竜人。

そういえば昔の昔、天竜人という権力が嫌で、天竜人の権利を放棄した一族がいたと聞いたことがある。

天竜人達は皆、忌まわしき歴史だと言ってそれらの資料をほとんど処分してしまったから詳しいことはわからないけれど。

「天竜人が地に落ちたらどうなるか想像がつくか？」

『っ……それは』

「お前なら分かるだろ？天竜人への怒りを感じている奴らの悪意を一身に背負うことになる」

『………！』

それは容易に想像ができた。

地に落ちた飛べない白鳥は陸を生きる動物達の格好の餌食だ。

聞かされるのは男が体験してきた数々の非道い仕打ち。