〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ5)

今日:24 hit、昨日:48 hit、合計:322,192 hit

読心術【ルッチ】ページ5

私は人の心が読めた。
何故かなんて知らない。物心ついた頃からそうだった。
小さい頃は人の心が読めてしまうのが怖くて、色んな人に訴えた。だけど誰も信じてくれなかった。両親はそんな嘘はつくなと私を怒った。
嘘なんてついてないのに。

いつしか私は心が読めることを隠すようになった。

働ける年齢になったら故郷を捨て、知らない島で1人で暮らし働き始めた。そして1年ごとに土地を移り住んだ。
長く居すぎると、身の回りの人の本音が溜まっていき辛くなるから。

この島も、もうすぐ1年が経つ。
そろそろ潮時だ。
ここの市長さんには随分とお世話になったから、少し寂しい気もするけれど。

『いらっしゃいませ。あ、アイスバーグさん……と、そちらの方々は初めてお会いしますね』

「よう、A。4人なんだが席は空いてるか？今度うちのガレーラカンパニーで新しく雇う仲間たちだ」

『ええ、そちらの窓際の席をどうぞ』

アイスバーグさんは、このウォーターセブンの市長をやりながらガレーラカンパニーという造船業の社長も兼任している。とてもすごい方だ。
たまに私が働いているレストランにご飯を食べに来る。ただの一市民と市長の関係だ。

(アイスバーグの女か？)

ふと、心の声が聞こえる。
あのシルクハットの男の人か。違いますよーと私も心の中で否定する。まぁ、私の心の声は届かないけれど。

「よろしくね。私はカリファよ。今度からアイスバーグさんの秘書として働き始めるわ」

(とりあえず名前を聞いて後で調べてみましょう。アイスバーグと交友関係があるのなら、プルトンの設計図のことも何か知ってるかもしれない)

プルトン？
何のことだろうと思ったけれど、私には関係ないことだろうなとスルーした。

『よろしくお願いします。Aです』

「ワシはカクじゃ！それと隣にいるのがルッチ。ワシらは船大工として雇われたんじゃ」

(まぁ、本来の目的は別にあるがな)

…別の目的？

何のことだろうと思ったが、顔には出さなかった。人の心を読むのは慣れてるし。特に大した目的でもないだろう。

そう考えながらルッチさんの前に水を置こうとした時、新たな心の声が聞こえてきた。

(アイスバーグが持つ古代兵器の設計図を奪い、殺す。CP9の名にかけて)

『……っ！？』

ガシャン！！

持っていたグラスが手から滑り落ちた。