〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ37)

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「ちょっとA！あんたまた歴史の授業、居眠りしてたでしょ！」

『だ、だって…』

歴史と人物覚えるのって難しいんだもん。
覚えようとしてもすぐ眠くなっちゃうし。

「今日の歴史の小テストもヤバかったんじゃないの？」

『か、海賊王のフルネームは書けたよ！』

「それくらい当たり前でしょ！当然、海賊王の右腕として働いていた“冥王”の異名を持つ副船長の名前も書けたでしょうね？」

『……シルバーなんとかさんだよね？』

そう言うと友人は「呆れた！」と言って溜息を吐いた。

「“冥王”シルバーズ・レイリーよ！あんたねぇ、島の外に出たい！とか自由になりたい！とか言う前にもっと常識を学んだ方が良いわよ！」

『えー歴史の人物の名前知ってて役に立ったことないもん』

「いつか役に立つのよ！」

あんた、最近どこぞの旅人のおじいさんと仲良くお喋りしてるみたいだけど、そんなことよりももっと勉強しなさい！

友人の説教を『はいはい』と流して笑う。

だって私は過去の出来事よりも、今現在の出来事の方が興味があるんだもん

教科書や本に載っている歴史を振り返ることなんていつでも、誰にだってできる。

レイさんは本には載ってないもっと楽しくて面白いことをたくさん教えてくれるんだ。

『＿＿ってことがあったんですよレイさん！』

放課後、いつものようにレイさんのもとを訪ねて今日の学校での出来事を話すと、彼は珍しく笑顔を崩した。

驚いてるような焦っているような、とにかく見たことがない表情。

『レイさん？大丈夫ですか？』

「あぁ、いや。何でもないよ。少し驚いただけだ」

『えっ、もしかして私の常識が無さすぎて驚いちゃった感じですか！？』

レイさんに「こいつと話すのは時間の無駄だ」って思われたらショックすぎるんだけど！

『でもでも、その友人のおかげで海賊王の副船長のフルネームは言えるようになったんですよ！』

「…君は私を試しているのか？」

『へ？』

レイさんの言っている意味がわからず思わず間抜けな声が漏れる。
それを聞いたレイさんは笑う。

「フッ、ハハハ！いやぁ本当に君は素直な娘だな。見聞色を使うまでもない」

『レイさん！褒めてないでしょう！馬鹿にされてることはわかりますよ！』

そう笑いながら、いつもの調子でレイさんの肩を軽く叩こうと思い手を伸ばす。

ガシッ

伸ばした手は肩に触れる前に、レイさんの手に捕まって空中で止まった。