〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ30)

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結局、私はこのあやしさ満点の男を拾うことになってしまった。
助けを呼ばなくて良いと言われたのなら放置しよっと！そう簡単に割り切れたら楽だったのに。
案外私はお人好しだった。

肩を支え、男にも歩いてもらい何とか自宅に入ることができた。

『今、できる範囲でお傷の手当てするのでそのベッドに寝てください！』

そう言うと男は大人しく横になった。
やはり身体的に限界だったんだろう。そのまま気絶するようにして眠ってしまった。

でも寝てる方がやりやすいからよかった。

そう思いながら服を脱がして洗濯機にポイポイと入れていく。下着は汚れてないからいいや。…寝てる人のズボンを勝手に脱がすとか犯罪者みたいだ私。

このモフモフの赤いコート、これはクリーニングに出した方が良さそうだな。

露出した肌には痛々しい傷跡がいくつも残っていた。普段全く使わない救急箱を持ってきてネットを見ながら包帯を巻いていく。
全部終わった時には、もう私の眠気も限界だった。

『今日は…早く眠って、明日は朝からショッピングに行こうと思ってたけどやっぱ寝よ…』

そのまま私はカーペットが敷いてある床の上にゴロンと横になってものの数十秒で夢の世界に旅立ったのであった。

＿＿＿＿＿＿＿＿

「おい、起きろ」

ペチペチと頬を叩かれている感覚で目が覚めた。
まだ眠くて頭がボーッとしてる。

開き切っていない目に鮮やかな赤色が映る。
あれ、こんな赤いインテリア私の部屋にあったっけ。
そう思って今一度目を擦って前を見ると、パンツ一丁の赤髪の男がベッドの上に座っていた。

『……あっ！ご、ごめんなさい！』

「あ？何が？」

『えっ、えっと……か、無理矢理家に連れてきちゃったととか、勝手に服脱がして手当てしちゃったこととか、手当てが雑なのとか、途中で寝てしまったこととか、それから』

「テメェが謝るようなことはしてねーだろ」

俺の顔が怖いなら悪いが、俺は元々こういう顔だ。
お前には感謝してる。

思わず口がポカンと空いていたようだ。「顔に出過ぎだテメェ」と、その大きな手で口を閉じられた。

男の人の名前はユースタス・キッドというらしい。
外国の方ですか？と聞いたら「何のことだ」と返された。
話してみて分かったが、キッドさんはこの世界の人ではないみたいだった。にわかには信じ難いが、彼が嘘を言っているようには見えなかったので全面的に信じることにした。