〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ23)

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暗い道をひたすら歩く。

長いように思えた帰り道も後ちょっと。この角曲がったら家はもう見えてくる。

近道した分、早く着きそうで嬉しい。
家に帰ったら何をしようかな。録画しておいたドラマを観て、そうだ！楽しみに取っておいたアイスも食べちゃおう！

そんなことを考えながら道を曲がった。

『………え？』

人がいた。

いや、正確には

人だったものがいた。

細い道を塞ぐように、人だったものが倒れていた。

なぜ過去形になっているのかと言うと、人だったものの周りはおびただしいほどの赤色で溢れていたからだ。

とても生きてるとは思えないほどの赤。そう、血。

そして倒れている人の傍にもう1人が立っているのが分かった。

じゃあこれは

＿＿殺人

『っ、きゃ……むぐっ！？』

逃げようとしたその時

死体のそばに立っていた人物は消えた。

そして次の瞬間、私の背後に立っていた。

背後から口を塞がれ、両腕は背中で一本に固定されてしまった。

逃げようともがいても、まるでびくともしない。

やだ、やだ、このままだと私も殺される。
さっき倒れてた人みたいに無惨に殺される…！

逃げたいのに逃げられなくて

そんな私にできることは、ただ涙を流すことだけだった。恐怖に震えながら泣くことしかできない。

「やっぱりAはか弱いのぉ」

耳元で聞こえた声に聞き覚えがあった。

いや、聞き覚えなんてうろ覚えなんてものじゃない。聞いた瞬間に声の人物が確定した。好きな、憧れていた人の声だ。間違うはずがない。

『…カク、さ、ん…？』

「何じゃ！？声聞いただけでわかったんか！嬉しいのぅ」

カクさんはそう言って私の拘束を解いて正面に立った。
ニコニコといつもの素敵な笑顔で笑っていた。
いつもだったら素敵だった。でも今はその笑顔は恐怖でしかない。

「いやぁ、しかし驚いた！」

まさか仕事してるところをAに見られるとは思わなかったのぅ。

まあ、でもこれも運命じゃろうて。

「遅かれ早かれ、お前さんはワシのものにする予定だったんじゃ。ちょっと予定が早まっただけじゃ」

安心せい。Aの前では、今までと同じ優しい優しいカクさんじゃよ。

そう言うと殺人鬼は私の片想いの相手と同じ笑顔を浮かべ、同じ手で私を抱き上げたのだった。

“優しい優しい彼”

(彼はとても優しいのです)

(殺人を仕事にしていること以外は)