〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ19)

今日:76 hit、昨日:55 hit、合計:322,087 hit

記憶【カタクリ】ページ19

なんだか、最近記憶がぼんやりとしていることが多い。自分が誰でどういった人生を送ってきたのかとかは分かってる。ボケるにはまだ早すぎる。
ベッドに横になったまま伸びをしていると、隣で寝てるあの人が動く音がした。

「起きたのか」

『うん、おはようあなた』

彼の大きい手が私を抱き寄せ、私の身体は彼の体にすっぽりと埋まった。

「身体は辛くないか」

『ありがとう。大丈夫』

彼は私のことをいつも気にかけてくれる。
かっこよくて、優しくて、私の自慢の夫だ。

『もう起きなきゃね。カタクリも今日はお母様の護衛のお仕事があるんでしょ？』

「あぁ、そうだな。離れがたいが…」

『ふふ、私もよ。今日のおやつはドーナツを作ったから持っていくね』

玄関で彼の姿を見送り、自分はエプロンに袖を通す。さぁ、彼は甘いものが好きじゃないから甘さ控えめのお菓子でも＿＿＿

あれ？何を言ってるんだ私は。
カタクリはドーナツとか甘いものが大好きじゃないか。

ズキン

あぁ、また頭痛がする。最近よく痛くなるな…。美味しいドーナツ作らなきゃいけないのに。

『えっと、ボウルは確か上の棚の中に……きゃっ！？』

上の棚を開けると、ガラガラッと調理器具が雪崩を起こして倒れてきた。あーもう！あの人ったら適当に上の棚に突っ込んだのね！
私も彼も身長が高くないから、上の棚に物を入れるときは踏み台を使って！って何度も言ってるのに治らないんだから＿＿＿

何の話だ。
彼は、カタクリは身長が5mある。それこそ私が物を取るのに苦戦してる上の棚よりも高い。踏み台なんていらない。

ズキンズキン

あぁ、痛い。頭が痛い。

少し横になろうかな。
ソファの上で横になると、ふとテレビラックの下に何か紙が挟まってるのが見えた。

何だろうと思い、紙を取り出して見てみる。

1枚の写真だった。
私と誰かの2ショットだった。
幸せそうに笑っている。
私は白いドレスを着ていた。
……これは、ウエディングドレスだ。

ズキンズキンズキン

わからない。わからない。

この人は誰。私はカタクリの妻でしょう？

だけどこの写真は、捨ててはいけない
そんな直感を感じ取り、見つからないよう元の場所にしまう。

そして立ち上がったその時

「どこかへ行くつもりなのか？」

私の、大好きな、大好きなはずの夫の声が

背後から聞こえた。