〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ11)

今日:23 hit、昨日:64 hit、合計:321,979 hit

ようこそ異世界へ【ロー】ページ11

＿＿チュンチュン

小鳥のさえずりが聞こえる。
カーテンの隙間から太陽の光が入った。

朝が来た。
来て欲しくもない朝が来た。

学校に行かなくちゃ。
行きたくないけれど行かなくちゃ。

行かなきゃ両親に怒られる。
行かなきゃ授業に置いてかれる。
行かなきゃ友達との友情に亀裂ができる。

重たい身体を起こして、洗面台へ向かう。
顔を洗おうと鏡を見る。

あぁ、ひどい顔してる。
隈がひどくて顔色が悪い。せっかくのイケメンが台無しだ。
そう思いながらバシャバシャと顔を洗う。

そしてふと気づく。

『…は？』

イケメンって何のことだ。
私は女だ。というか、そもそも。

あれは私の顔じゃない。

顔を上げると、やはり私の顔は写ってなくて。
代わりに顔色の悪い隈男が写っていた。

『いや、誰だよ』

「こっちの台詞だ」

『うわ喋った』

「…それもこっちの台詞だ」

ペタペタと私の顔を触ってみるが、私の顔に変化はないようだ。この鏡の中の男と私はイコールではないようだ。
よかった。いくらイケメンでも私は男になりたいとは思ってない。

「おい、まつ毛ついてんぞ」

『マジですか。私の鏡には両目に濃い隈があるってことしか分からない』

「俺じゃねぇ。テメェの顔だ」

『そんなこと言われたって私の顔、写らないんだもの』

そう言うと、鏡の中のイケメン隈男(面倒くさいから鏡男でいいや)は自分の指を顔に当てて場所を教えてくれた。
人を平気で殺しそうな顔してるのに案外優しいな、とボソッと言うと人を殺しそうな顔して睨んできた。

どっかのマフィアのボスだったりします？

相変わらず私の顔は写らなかったが、もたもたしてると遅刻する。仕方ないから鏡男をガン見しながら歯磨きを始めた。

「仮にも女が知らない男の前で、そんな間抜けな顔するのはどうかと思う」

『ふふふぁいふぇふひょ』

「何も分かんねぇよ」

うるさいですよ、と言ったが伝わらなかったらしい。
まぁ、伝わらない方が良かったとは思うが。

『ガラガラガラ、ペー』

「恥じらいをどこに捨ててきたんだお前」

『お母さんの子宮の中ですかね。きっと次に生まれてくる私の弟か妹が拾ってきてくれますよ』

「なんだこいつ」

なんか普通に会話してるけど、これ驚くべき案件だったよな。
まぁ、寝ぼけてたから仕方ない。

『ところで、貴方誰ですか』

「本当に今更だな」

トラファルガー＝ローだ。

覚えておけ