〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ2)

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最初に視線を感じてから、1週間経った。

誰かに見られてる感覚は減るどころか増えているような感じがした。疑いはもはや確信に変わっていた。

誰かが私を尾けてる。

不気味だし、とても怖い。
だけど街のお巡りさんに相談しても、どうせ勘違いだろうと笑われて終わると思う。
私が住むこの島はとても平和だから。

いつもと同じように友達と喋りながら帰り道を歩いた。そしていつもと同じところで別れ道となり、バイバイと手を振った。

さぁ帰ろうと足を踏み出したときに強く感じる視線。1人になると視線が鋭くなる＿＿そんな気がする。

お巡りさんは頼れない。なら自分で何とかするしかない。平和な日常を守るためには自分で解決しないと。

キョロキョロと周りを見渡し、まとわりつく視線以外は誰もいないことを確認した。覚悟を決めよう。
獣人化すれば聴覚と嗅覚は格段に上がる。
獣人化し、一瞬で気配を辿り犯人を突き止める！

鞄を地面に落とし、意識を集中させる。
身体が変わっていく感覚。五感が敏感になり、筋力が上がっていくのがわかる。

目を瞑って気配を辿る。

『……上かっ！』

地面を勢いよく蹴って飛び上がる。
ウサギの脚力だ。建物の屋根に登ることなど朝飯前。

屋根に上にはシルクハットにスーツ姿の男が1人立っていた。
男は驚いたようにこっちを見ていた。

『…あのっ！私に何か用ですか！？』

言った…！

男の言葉をジッと待つ。
男は、私の姿を上から下まで眺めるとニヤリと笑った。

ゾクリ

途端に背筋に寒気が走って、身体が凍り付いたかのように動けなくなる。
何、この感覚。

「なるほど、ウサギか。惹かれるわけだな」

男がゆっくりと近づいてくる。

一歩、また一歩と男との距離が近づく度に頭の中で警報が鳴り響く。

逃げろ逃げろ。

野性の勘がそう言っているように。

『っ、来ないで！！』

大きな声を出したおかげか、凍り付いていた身体が動くようになった。地面に降り、男に背を向けて全速力で走る。

獣人化を解くわけにはいかない。解いたらウサギの速度が出ない。となると必然的に街の方には逃げられない。
そう考えた私は裏山の森の方へ逃げることにした。

「ククッ…逃げ足が早いな」

背後では愉快そうに笑う男。

そして慌てた様子もなく、ウサギが逃げた先へ歩き始めた。それはまさに弱い者をゆっくりと追い詰めていく、肉食獣の狩りそのものだった。