〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ1)

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ウサギ狩り【ルッチ】ページ1

この世界には悪魔の実というものが存在する。
一口かじれば、泳げなくなるのを引き換えに特殊な能力が手に入る。
しかし、その果実はとても希少。悪魔の実を探し求めて見つからずに一生を終える人も珍しくない。

ここまで説明すると、そっかー悪魔の実って珍しいんだなーと思ってしまうだろうが、先に言っておくと私は能力者だ。
びっくりするでしょ。私もびっくりした。
朝起きて鏡を見たらウサギの耳と尻尾が生えてて、肌は白い短い毛で覆われていたのだ。

思い当たることといえば昨日、近所の八百屋さんの試作の野菜ジュースを飲んだくらいだが。めちゃくちゃ不味くて『おばちゃん！この野菜ジュースは売れないよ！』とアドバイスしてあげた。そういえばおばちゃん「あらー、見たことない野菜があったから入れてみたけど、そらが美味しくなかったのかしら」と言ってた。

いや、見たことない野菜入れるなよと思ったけど。まぁ、一口しか飲んでないし大丈夫だろうと思って水に流すことにした。

で、目が覚めたらウサギ人間になってたというわけだ。ははは笑えない。

こんな格好じゃ外にも出れないと思い、私は能力を制御しようと努力した。今となっては普通に人型を維持できてるが、能力者になりたての頃は油断するとウサギの耳がピョンッと出てきていた。
何度、友人の前で『一発芸バニーガール』で誤魔化しただろうか。

私が能力者だと知ってるのは私だけだ。
親にすら言ってない。無駄な心配をかけたくないし、何よりこの日常を壊したくないから。

まぁ、自己満足と言われればそれまでだが。

「それじゃA！また明日学校でね」

『バイバイ！またね』

学校からの帰り道。
友達と別れて家へと向かう。

家に帰ったら録画してるドラマを見ようかなと考えていたが、何か違和感を感じて立ち止まった。

誰かに…見られてる？

確信があるわけじゃなかった。だけど、視線を感じる。ウサギの能力者になってから、どうもこういう感覚が敏感になったようなのだ。
キョロキョロと辺りを見渡すが、ここは住宅街で家が立ち並んでいるが、人は誰もいない。

『気のせい、かな』

獣人化してウサ耳を出せば、もっと気配を読めるんだろうが、こんな明るい時間でウサギ人間になって誰かにバレるリスクは負いたくない。

どうせ、私の勘違いだし。

そう考えて、ウサギは家に帰った。

屋根の上で肉食獣が見つめているのに気づかずに。