〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ25)

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『……んん、もう朝かな』

寝ぼけながら目を擦る。
何だか昨日の夜の記憶が曖昧だ。私、いつ寝たんだっけ。
そう思いながら身体を起こす。

『…あれ？』

徐々に覚醒し始める頭とそれに伴い感じる違和感。
天蓋付きの黒のレースのカーテンがついたベッド。
周りを取り囲むぬいぐるみたち。
その他、ゴシック調でまとめられた家具達が配置されてるこの部屋は私の部屋ではない。

この部屋は私の異世界での新しい友達の部屋だ。

「起きたか！A。おはよう！」

『あ、ペローナちゃんおはよう。もしかして私、ペローナちゃんのお部屋で遊んでて寝ちゃった？』

「良いんだ！Aはここに私と一緒に住むからな！」

『え？』

今までは鷹の目さんの所有する城のゲストハウスを使用していた。どうしていきなり

「可愛いだろこの部屋！可愛いものだけを集めたアタシのお気に入りの部屋なんだ！」

彼女はいつものようにホロホロと笑って私のそばに近づく。そうして私が寝ているベッドに腰掛けると、私の頬をスルリと撫でた。

「Aは可愛い。お前はアタシの可愛いコレクションのひとつだ」

『！！』

「あっ！唇が乾いちゃってるな！ちょっと待ってろ。新色の色付きリップが手に入ったんだ！」

私とお揃いだぞ！
そう言って私の唇に丁寧にリップをつける。
いつものペローナちゃん、に見える。でも、どこかおかしい。

『ペローナちゃん！あの、私、昨日元の世界に帰れるかもって話＿』

「それが何だ？」

あまりにも冷たい声にビクリと肩が震える。

「Aが来てから本当に楽しかったんだ。今まで同じ歳くらいの友達とかいたことなかったから」

『…私もペローナちゃんといると楽しいよ！でも＿「元の世界になんて帰さない」』

言いかけた言葉を遮られる。

「鷹の目にも迷惑がかからないなら自由にしろ、って許可貰ってるんだ！アイツもアイツで結構Aのこと気に入ってるみてーだし。ま、Aはやらないけどな！」

ギューと抱きしめられる。
女の子の力だ。振り解こうと思えばできるはずだ。
それなのに、体が動かない。
彼女とはとても良い関係を築いてきたと思ってたのに、私はどこで間違えたんだろう。

「可愛いお前は可愛いアタシと可愛いこの部屋で可愛いことをいっぱいして一生一緒に過ごすんだ！」

“可愛いに囚われる”

(いつの間にか)

(私は彼女の言う“可愛い”に囚われてしまった)