検索窓
今日:2 hit、昨日:24 hit、合計:31,055 hit

葛藤と答え 鉢屋said ページ2

「見つけた」


なんの前触れもなく聞こえた声に反応した直後、ほぼ本能的な反射で鷹尾を抱えたまま右に避ける。

先程までいたその場所には一本の苦無


「三郎っ!?無事か?」

「あ、あぁ。それより…」


腕の中の鷹尾の安否を再度確認してから、少し離れた木の下で佇む人影を見た。

そして困惑する


「衣筒先輩…どうしてここに」

「わけは後で話す。今はそいつを渡してもらおうか」

「なん、だって?」

「私は嘉黒を殲滅しろという依頼を受けている。

残りはそいつだけ

もっとも、既に他の奴らは学園とそいつによって片付いたみたいだがな」


(だから、この場所だけ血の匂いが酷かったのか)


立花先輩らに近づくなと脅してまで来させなかったのは、残った嘉黒を一掃するため


衣筒先輩が示す“そいつ”とは、間違いなく鷹尾の事だろう。だが、あまりの事態に頭が追いつかない。
この男は鷹尾をどうするつもりなのだろうか


「嘉黒の一人息子がまさかあの時の子だったなんて

運命ってのは実に残酷だね」


(ここにいるのが鷹尾だってのを知ってるのか?知ってて、殺そうと?)



「私は、嘉黒の血族を一人残らず殺せと言われているんだ。例え元後輩だろうと、仕事なら話は別だ」



嘉黒の血を引く者を殺す。一人残らず

つまり、それは……



「鷹尾を殺そうってのかっ」

「意外だ。庇うのか?」

「当然でしょ」

「君の家族を…一族を滅ぼしたのは紛れもない嘉黒なんだよ

君は、許せるというのか?」



(家族…)


“三郎”


(…姉さん、)


「…っ許せるわけないでしょう

何度思い出しても腑が煮えくりかえりそうですよ」

「だったら」
「でも、鷹尾が私の家族を殺したわけじゃない」

「…」

「この人は…姉さんの為に、泣いてくれたんだ」


(姉さんを想って、泣いてくれたんだ)


泣き叫びたくなる様な記憶の中で、鷹尾の後ろ姿が異様に印象的だったのを覚えてる。



“すまない、鉢屋。 すまない…”


あの日、振り返りもせずひたすら懺悔し続ける鷹尾の顔は背中越しで見れなかったけどあれは紛れもない叫びだった。

姉の骸を抱きしめながら、泣いていた。

項垂れて頼りなく見えたあの背に、俺は何もしてあげられなかった。



「俺はこの人と馬が合わないけど憎いとは思った事ないです。ましてや、復讐なんてもっとありえない」





今思えば、あの日から俺の答えは決まっていたんだ

呼び戻す声→←対価



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (103 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
192人がお気に入り
設定タグ:忍たま乱太郎 , 六年生 , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

伊綱(プロフ) - みぢゅさん» 温かいコメント痛み入ります!いつでもお越し下さい!! (12月16日 21時) (レス) id: 4fcd5fb6be (このIDを非表示/違反報告)
みぢゅ(プロフ) - 昨日この作品を見つけて時間も忘れて最後まで読ませて頂きました!! すっごく面白くて、言葉選びも綺麗で、本当に感動しました!また何度でも愛読させていただきます…! (12月16日 9時) (レス) @page40 id: 26ff2501e8 (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 猫毬かなめさん» ありがとうございます。何度でもお越しください。彼らはあなたを歓迎してくれると思います! (8月22日 9時) (レス) id: 4fcd5fb6be (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - ハクさん» コメントありがとうございます!この作品はずっと残り続けるのでこれからも愛読していただけたら嬉しいです (8月22日 9時) (レス) id: 4fcd5fb6be (このIDを非表示/違反報告)
猫毬かなめ(プロフ) - 完結おめでとうございます!更新がある毎に初めから読み返したくなる、とてもお気に入りの作品でした。この六年生達の絡みが紡がれなくなるのは寂しいですが、これからまた何度も読み返し会いに来たいと思います。お疲れ様でした。ありがとうございました。 (8月22日 3時) (レス) @page40 id: 7e8e70364c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:伊綱 | 作成日時:2021年8月11日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。