詰みである。 ページ4
今日の私は、非常に反射神経がいいらしい
咄嗟の反応でドアノブに手をかけて一気に扉を閉めようとした
…が、それは悟によって阻止される。
今私達は顔と腕に青筋を立てて必死に攻防を繰り広げているのだ
「おいおい、急に閉める事ないんじゃねぇの??えぇ?」
『だったらそのまま離してくれたら万事解決よ』
「離すわけねぇだろお前が離せ」
『あんたがその怖い顔やめてくれたら考えてやらなくもないけどね』
現役時代の怪力はまだ健在だからね
そう言って、力勝負に持ち込みなんとかもう少しで扉を閉めれる所で、悟が呟く
「なぁ、頼むよ。A」
ここ、開けて?
露わになってる美顔をこれ見よがしに使い、私の気を逸らそうとしてくる。
その手にはのらないから!!
「僕さ、Aがなーんにも言わずに家出てったの
すっごく悲しかったんだよ?」
『…ゔ』
とても良心に刺さる事を言う。
そんな風に言われてしまうと、せっかく保たれてた力の均衡が揺らいでしまうじゃないか
「あはっ、なーんてね」
『…あっ!』
ひょいっと手を離されて勢いのまま後ろに尻餅をつく
(…やばっ)
咄嗟に離してしまったドアノブをもう一度掴もうとした
だけど、私の手はそれを掴む事は叶わなかった
「A、案外ちょろいよね」
今度こそ侵入を許してしまった悟が一歩、また一歩近づいてくる
『悟、あんたねぇ…』
「さて、と。
色々聞きたい事がたーくさんあるから」
これの、説明も含めて。
膝を折って同じ目線になった悟がひらひらと見せびらかしているのは
私が悟宛に書いた手紙
貼り付けていた笑顔がついに剥がれて
今度こそ本気で怒った悟の目が私を射抜いた。
「もう、逃がさねぇぞ。A」
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作者名:伊綱 | 作成日時:2023年10月2日 4時