かなり真面目な話 ページ21
「やっと体楽になった」
あれから約3時間。
ちょっとの睡眠でだいぶ顔色も良くなり
まだ少しだるいのかゆったりとした足取りで私の隣に腰を下ろす
一人の時間を潰す為に読んでいた本をそっと閉じる
『寝癖ついてるよ』
「あー…いいよ。気にしないし」
ピョコっと主張する髪を面白半分で摘む。だが、その手を払う気のない悟はされるがままだ
『ねぇ、悟』
「んー?」
『私考えたんだけどさ』
「なに、改まって」
『私、前に悟から誘われていた教職の話
受けようと思う』
「…まじ!?」
テーブルに肘をついて気怠げに話を聞いていた悟の目が目に見えて輝いた。
幻覚か。若干犬の耳と尻尾が見えた
(かわいい)
『ただ、一年頂戴。やりたい事があるの』
「は?なにすんの」
『それは秘密。でも、ちゃんと終わったら話すから』
「……」
『ダメ、かな…』
しばらくは黙って考え込んでいた悟だったが、すぐに
「……まぁAにとってそれが大事な過程なら
僕が止めるわけにはいかないでしょ」
『悟、』
「でも。二つ約束して」
『約束?』
「一つ。決して無茶をしない事
二つ。必ず生きて僕の所に戻って来る事
これが約束。
もし僕の目の届かない所で勝手に死んだりしたら
例え地獄の果てに行ってでもぶっ殺しに行くから」
いい?絶対。必ず。何がなんでも。戻って来てね
悟の言葉を理解するまで10秒
堪えきれずに私は吹き出した
「な、なんで笑うんだよ」
『なんて言うか…あんたにはもっとお似合いの人とかさ、いるでしょ?』
「…は?」
『傑の件であんたが私を気にしてるのは知ってる
感謝してる。
でも、私にばかりかまけてると婚期逃しちゃうよ
五条のボンボンがそれだとまずいでしょ?
当主ならなおさら』
傑がいなくなって生まれた穴を埋めようとして、お互いがお互いに無意識に縋っていた。
あくまで、傑の痕跡を探して
少なからず私はそう結論づけてる
『お互い特級。
日々の日常で生死不確かな私を待つよりももっといい人探した方がいいよ。ずっと側にいて支えてくれる人』
「…」
『怪力なら自慢できるけど、色気なんて私には皆無だし
それも考えたら「はぁああ…」』
俗に言う“クソデカため息”
これでもかと呆れ返った顔が視界に入る
「Aってほんッッッッとうに馬鹿だよね」
『え?』
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作者名:伊綱 | 作成日時:2023年10月2日 4時