心の拠り所 硝子side ページ15
「家入さん」
「すまない。大変だっただろ 七海」
「ななみぃ〜話はまだ終わってないわよ〜??」
「早く…助けて下さい」
「歌姫先輩。七海が可哀想なのでその辺にしてあげてください」
七海に悪絡みする歌姫先輩を引き剥がし、隣に座らせる。
先輩は私を認識してから大人しく隣でお酒をちびちび飲み始めた
……え、まだ飲むんですか?
「五条さん達は?」
「あっちに置いてきた。Aが正気に戻ってるから心配いらないよ」
「……そうですか」
(……ん?)
「…あの、家入さん」
「なんだ?」
「いつから、名前呼びになったんですか」
誰が?とは聞かなかった。
私の中で、最近呼称が変わった人間は一人しかいない
「五条が無理やり言わせたんだってさ。今じゃ普通に名前で呼んでるらしいけど…昔は“沙悟浄”なんて言われてたらしいよ?」
「なんですかそれ。西遊記ですか」
「私も思ったよ。ただAの方も色々思うところがあったんだろうね
封印解いてもらった恩もあるって言ってたし」
名前呼びなんてまだ可愛いもんだ
見ためだけで言えば付き合っているのだと言われても何ら差し支えのない距離感を、私は先につっこみたいくらいなのに
封印の件もそうだけど、何より一番はきっと
お互いがお互いを無意識に心の拠り所にしているのが強いのかもしれない
夏油がいなくなった事によって生まれた虚無感
それは、あいつの隣にずっといた二人だからこそ感じた虚しさだったんだろう
五条がAに執着するのも
Aがそれをなんだかんだ許してるのも
一重に心の穴を埋める為なのだと。私は解釈している
「もし仮に交際してたとしても
五条さんにはもったいない人です」
「おーおー言うね。何だったら奪ってみるか?五条から」
酔っ払いの戯言としてスルーされるだろうと軽く言ったつもりだった
だが、七海の回答は思いもよらないもので
「できてたら、とうの昔にしてますよ」
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作者名:伊綱 | 作成日時:2023年10月2日 4時