竹谷八左ヱ門 月夜の思い出 ページ49
時刻は丑三つ時＿。
遠くの方からギンギーンという声が聞こえたが気にするのはやめ、暴れ出しそうになっていた気持ちを落ち着かせようと屋根に登り、空に浮かぶ月を見上げた
だけど、竹谷がいるのは五年長屋じゃなくて二年の長屋の屋根である
一年の頃、まだ学園に慣れていなかった竹谷はよく故郷が恋しくなってはひっそりと泣いていた
そんな竹谷を見つけたのは当時二年生のAで
“一人では寂しくてね。一緒に見てくれる相手を探していたんだ”
まだ彼をよく知らなかった竹谷だが、スッと差し出された手を無意識に取っていた
Aに導かれるままやって来た先は彼の自室、の屋根
ごらん。そう言ってAが指差す先には静かに浮かびつつも確かな存在感を放っていた満月
“…きれい”
“だろ。ここは俺の特等席なんだ
お前は運がいいな竹谷。今日の月は格別美しい
さぁ、涙を拭いてよく見てみなよ 兎が餅をついているかもしれない”
兎が月で餅をついているという話を信じていた竹谷にとってAの言葉は魅力的だった。だから必死に目を凝らす
気づけばいつしか涙は引っ込んでいて、代わりになんとも言い難い感動が残っていた
“どうしても泣きたくなったらここへおいで
また一緒に月を見よう”
“いいんですか？”
“うん。だから…もう泣かないでね
お前が泣いていると、俺も悲しい”
“どうして、優しくしてくれるんですか？”
“お前は、俺の初めての後輩だから”
“へ？”
その言葉の意味を知ったのは次の日の委員会で、委員長に促されるまま目の前にやって来たのは昨晩一緒に月を見たその人だった
“二年ろ組の鷹尾Aです。これからよろしく”
(委員長…っ)
懐かしい記憶に何故だか泣けてきて、膝を抱え顔を埋める
(オレは、ここです)
どうしようもなく辛くてここに来てはみたけれど、やはりダメみたいだ
だけど、その理由は竹谷も分かっていた
たとえ月の持つ清らかな光だろうとも、きっとこのモヤモヤした気持ちは晴らす事はできないのだと
月じゃないのだ
側にあって欲しかったのは…
月に負けないくらい清らかな雰囲気を纏ったあの人
(委員長…やっぱりあなたじゃなきゃ、だめなんだ)
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伊綱(プロフ) - 紫さん» ありがとうございますありがとうございます！！めちゃくちゃ嬉しいです頑張りますっっ (2020年12月23日 12時) (
レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
紫 - この作品むっちゃ好きです。更新楽しみにしてます (2020年12月22日 3時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 葵さん» ありがとうございます！とても嬉しいですっっ (2020年10月28日 15時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 面白かったです！更新楽しみにしてます！ (2020年10月28日 14時) (レス) id: 1d63efc7c2 (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 猫築かなめさん» ありがとうございます！！なるべく更新できるよう頑張ります (2020年10月23日 11時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊綱 | 作成日時：2020年7月25日 13時
