過去編 「俺」が生まれた日3 ページ29
『…』
力を失い倒れる体を受け止める。
その姿を再確認した時__ぷつんっとどこかで何かが切れる音がした
「あともう一匹、………!」
そう言って忍が瞬きした刹那、俺は既に忍の懐へと侵入していた
そして、何の躊躇いもなく敵の急所を見つけて斬る
その体は重力に従い、地面に沈む。
『…』
「……はは、つくしつよーい」
『!!…Aっ』
俺は我に帰り、急いでAの元へと駆け寄る
即死には至らなかったのだろう。かろうじて息のあるAは苦しそうに笑った
『今止血するから…っ絶対助かる!こんな傷、』
(…くそっ、止まれ……止まれよ)
患部を抑えて止血を試みるもどんどん溢れてくる
頭の中では「死」の文字が駆け巡っていた
「…一個だけ、心残りがあるんだ
この先の、君が、僕なしでも…生きてけるか」
まるで遺言を残すと言わんばかりに呟くAに俺は首を横に振る
『死なない、死なないよ…大丈夫だ。絶対助けるから』
「君、今までで1番下手な嘘じゃないか。
分かってるんだろ?ほんとうは」
もう、助からない。
分かってる。でも、でも…
「ずっと…君を1人にさせるのが怖かった。1人にしたら何するかわからないし、死ぬのだって、君はきっと躊躇わないだろ?」
否定は出来なかった。現にさっきもAさえ逃げられればいいとだけ考えていた。
自分の身は二の次だと思って
自分がいなくなれば、また俺が無茶をするのではないか。
それが、Aにとって唯一の心残りなのだと言う
ならば、俺は1人旅立つお前が不安を残さない為に伝えなくてはならない
『大丈夫。もうお前が心配する事はしないよ。
だって俺は、お前の…Aの兄弟だもの』
「! そっ、か。なら、いい」
ゆっくり瞼が下がっていく…
命が、消えていく
「ーーー。」
『…!』
微かに聞こえた言葉を最後に、Aは眠りについた
もう二度と、その目が俺を見る事はない
『……ぅ、…』
その体を強く抱きしめてAの最期の言葉を噛み締める
(あぁ、俺もだよ…)
“さようなら、大好きだよ。僕の、兄弟__”
さようなら、大好きだよ。俺の……兄弟。
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伊綱(プロフ) - 紫さん» ありがとうございますありがとうございます!!めちゃくちゃ嬉しいです頑張りますっっ (2020年12月23日 12時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
紫 - この作品むっちゃ好きです。更新楽しみにしてます (2020年12月22日 3時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 葵さん» ありがとうございます!とても嬉しいですっっ (2020年10月28日 15時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年10月28日 14時) (レス) id: 1d63efc7c2 (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 猫築かなめさん» ありがとうございます!!なるべく更新できるよう頑張ります (2020年10月23日 11時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊綱 | 作成日時:2020年7月25日 13時