記憶 (ページ22)

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コンビニを出て帰り道を歩き出した。

すると道路の向こう側で自転車のベルが2回なった。

「花子ーー！」

「晶哉笑」

自転車に乗っているのは晶哉だった。

横断歩道を走って渡る。

「こんな遅い時間にどうしたの？」

「さっきドラムのレッスン終わって

花子いるかなー思ってちょっとだけ待ってたんよ。

そしたらすぐ出てきた！」

「なにそれ笑」

あまりにも晶哉が嬉しそうに話しているので私は笑うしかなかった。

「家まで送るで。暗いし危ないやろ。」

「あー…」

晶哉の気持ちは嬉しかったが、私の住んでいるボロアパートを見られるのは嫌だった。

晶哉が私を可哀想な人と思うかもしれないことが怖かった。

「…ごめん、嫌やったらええねん。」

晶哉が少し悲しそうに笑うので心が苦しくなった。

「晶哉、あのね？」

私は思い切って話してみようと思った。

私の家が貧乏なこと。学費と生活費を稼ぐことで精一杯なこと。

「ん？どうした？」

晶哉があまりにも優しい顔で私を見るから、

同情されるのが怖くて言えなかった。

「私家賃ケチりすぎてボロアパートに住んでるの笑

だから見られるの恥ずかしいなってそれだけ笑」

咄嗟についた半分本当で半分嘘のこと。

「…そうなん？なんやーなんかまずいこと言ったかと思った。」

私の歩幅に合わせてゆっくり長い脚を動かす晶哉。

晶哉はどうしてこんなに私に優しいのだろう。