3 ページ3
現れたのは隣の部屋の住人、末澤さん。
背は高くないけど、その辺の男の人よりもだいぶきれいな顔をしている。
引っ越してきてから初めて顔を見た。
「あの…今ちょっとだけいい?」
「あ、はいっ。な、何かありましたか?」
隣の部屋の人が度を超えるイケメンであったことに動揺を隠せず、しどろもどろになってしまう返事。
彼はそんな私のことなど気にもとめていないようだった。
「このアパート、大家さんが毎日廊下とか掃除してくれてたんやけど、大家さん怪我して入院したらしくて。
大家さんしばらく退院できひんらしいのよ。」
「そうだったんですか?」
どうりでここ最近見かけないと思った。
「聞いてるか分からんけど、とりあえず、住んでる人らが何人かずつで掃除することになってん。
そんでな、俺とあんたが来週から当番やって隣のおばちゃんにさっき言われたからそれだけ伝えとくわ。」
「わかりました!じゃあ、えっと、来週から…」
やっぱりドギマギしてしまう私。
そんな私を見て目の前の彼はうっすらと笑う。
「そんな緊張せんでええて。じゃあまたよろしくな。」
サンダルのペタペタという音が遠ざかり、左の部屋のドアが閉まる。
(末澤さん…か…。)
その日の夜は、彼の甘い香水の匂いが忘れられなかった。
39人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朱沼 | 作成日時:2024年2月18日 0時