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講義を終えてバイトに向かおうとしていた時だった。
「花子!」
後ろから走って追いかけてきたのは晶哉。
「今からバイト?」
「そうだよ。」
「俺も行くわ。」
「なんでよ笑」
「このあと予定ないし。駄目なん?」
「別にいいけど…」
一人の私に気を遣ってくれてるのだろうと思った。
私は大学の最寄り駅から歩いて10分ほどの場所にあるコンビニで働いている。
「花子さぁ…なんか良いことあったやろ。」
晶哉がニヤニヤしながら私の顔を覗いてくる。
晶哉は私よりだいぶ背が高いから、見下されるのが少しムカつく。
「何もないよ?」
「いや、今日講義中ずっとうっすら笑っててんなー。俺見てたで?」
「本当になんもないって!」
「うわ!絶対嘘や!鼻の穴膨らんでるで!」
「それは晶哉でしょ!!」
晶哉はケラケラ笑っている。
「何や、彼氏でもできたんか。」
彼氏ではないけど…鋭いところをついてくる。
これが晶哉の怖いところ。
いつもふざけてるように見えて、実は周りをちゃんと見てるから、晶哉に嘘を付くとすぐばれる。
私は黙ってしまった。
「いや…冗談やってんけど笑
…ほんまに彼氏?」
晶哉の声が少し真剣になった。
「彼氏じゃないよ。そんなのできるわけないし。」
「そっかー。できたら教えてな。」
晶哉はいつもの通りの優しい声に戻った。
頑張れよーと気の抜けた晶哉の応援を受けて、裏の出入り口からコンビニに入った。
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作者名:朱沼 | 作成日時:2024年2月18日 0時