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『いやー、涼兄ちゃんてば絶対良い嫁になるよねー』

「いや婿だからな、俺男だから!………はあ、それ大学でも言われるんだよ………」



なんだよ嫁って、とぶつぶつ呟く涼。しかしAは生あたたかい目で涼を見遣る。………多分その雑炊を作りながらスプーンを用意してくれる手際とかだと思うよ。勿論口には出さない。



『まあ涼兄ちゃん球技系スポーツほんのすこーし苦手らしいけどさ。そんな欠点すらモテポイントらしいね、よっモテ男!高嶺の花!』

「待て待て待て。………それ誰に聞いた?」

『兄ちゃんの友だちの江波さん。』

「………ほお?」



あいつ覚えとけよ、と呟く涼の目が据わったのを見てAは心のなかで静かに合掌した。江波さん安らかにねむりたまえ。優しそうな顔立ちからは想像出来ないが、こう見えて涼は空手黒帯。怒らせたら物凄く恐いし痛いのだ。

昔、男子に苛められて大泣きして帰って来たAにちょっと待ってろと言い残し、数十分後。

男子たちの頭に大きなたんこぶが漫画のように並んでいたことがある。男子たちは真っ青になっていた。何を言われたのか今でもわからない。知りたくもない。ただしわかるのは涼を本気で怒らせたらいけないということである。

因みに江波さんとは涼の幼なじみにして男友達で、今彼女募集中の少し残念な青年だ。Aは江波さんを擁護しようか考えて___この前ブラコンと言われたことを思いだし___まあいいやと思考を放棄した。江波さんは涼の親友だし、やり過ぎることは無い………と思う。うん。多分。



『ご馳走様ー!あ、片付けやるよ、兄ちゃんレポート有るんでしょ?』

「おう、悪いな。頼むわ。」

『んー。………んん?』


ぽん、と頭をかるく叩いてリビングでかたかたとパソコンを打ち始める涼。それに生返事を返して食器を洗い始めたAは、ふと何かに見られているような気配を感じて振り返った。そこには何もない。有る筈がない、涼とAの二人暮らしなのだから。



『(………気のせいか。)』



しかし無理矢理に意識を手元に戻して食器洗いを終えるもその気配は消えなかった。得たいの知れない気配に言い様の無い恐怖を感じて逃げるようにリビングにいる涼のもとへ駆け寄る。何かに怯えるAにどうしたのかと怪訝そうに涼が尋ねたとたん。



ドン!!!



家が、跳ねた(・・ ・・・)

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作者名:Writer | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年1月9日 15時

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