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それから5年後祖母は亡くなった。涼が二十歳の誕生日を迎えた3日後の事である。死因は心不全。
安心したように微笑みを浮かべて横たわっていた祖母の遺骸を前に、涼とAは泣いた。
彼女の横にあった遺書には涼がAの後見人になれること、知り合いの信頼できる弁護士に色々手続きを頼んで済ませたから心配ないこと、心残りは涼とAの結婚式が見れなかったことなどが流麗な字体で書かれていた。彼女は自らの死期を予測していたのだ。Aは泣きながら、おばあちゃんらしいと笑った。涼も笑ってAを抱き締めた。
そうして涼は兄でありながら親代わりになった。性別上大変なことも有っただろうに、涼は細やかな配慮を随所にちりばめてAを世話してくれる。おかげで涼は完璧な主夫と化したのだが、本人曰く楽しいから良いらしい。
その事について、Aは中学生の時に一度だけ涼に尋ねたことがある。
私は涼にとって重荷なのではないかと。もっと家事を任せてくれても平気だと。大変なのではないかと。客観的に見ても家事の技術は涼の方が上で、Aは家事分担を少ししか担っていなかったから。
唐突に尋ねたことの要因のひとつは家庭科の授業の時、意地の悪い男子から手際の悪いことをからかわれたからでもあったのだけれど。
その問いに、涼は笑って答えた。
「俺がやりたいと思ってやってることだから、気にするなよ。大変なときはAを頼ってるし。年上だしこのくらいはなー………。まあそんな風に思ってくれるのは嬉しいから………一緒にやるか?」
『うぅ"ー………。兄ちゃんモテるでしょ。いやモテるよね!』
「は?」
『ああもう悩んだことが馬鹿馬鹿しい!そうだよね!!兄ちゃんそんな性格だよね知ってる!!!』
「……?何かよくわかんないけど解決したのか?」
『したよもう!
………とどのつまりね、うちの兄ちゃんは最高だってことだよ。』
「!?」
にこりと笑って言い放ったAに涼は顔を赤くした。女子か、と突っ込んだAにふくれた涼が、夕飯にAの苦手な豆料理ばかりを作ってAとじゃれあったのは良い思い出である。
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作者名:Writer | 作者ホームページ:
作成日時:2017年1月9日 15時