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俺は、俺だから。
ずっとそう思ってた。
何になっても、変わらないと思ってた。
でも
思っていた以上に世界は広くて大きくて
大人は俺の知らないことをたくさん知っていた。
エンターテイメントの世界で生きる事務所の社長は
厳しくて優しい強い人だった。
その下で働く大人たちも同じ志を持っていた。
入所してしばらくは、近いようですごく遠かった先輩たち。
舞台に立つ先輩の姿は、本当にキラキラしていた。
そのキラキラは
個人の努力と少しの才能、ほんのちょっとの運だということに気がついた。
俺も、あそこに立ちたい。
ただ、がむしゃらに打ち込んだ。
同級生の友達と遊びたい気持ちを抑え、レッスンのない日もローラースケートの練習にあてた。
小学校卒業を前に、芸能活動がスムーズに行えるようにと、私立の中学校を事務所から推薦された。
最初は、嫌だと言った。
どうして?と事務所の人に聞かれたから、友達と離れたくないと答えた。
違う学校へ行って疎遠になるくらいなら、それは友達ではないとバッサリ正論で返された。
それでも、ちょっと嫌だと言った。
それまで、わりと聞き分けのいい猪狩くんだったから、事務所の大人の人が驚いて、ママに連絡したようだった。
その日の夜にママに聞かれた。
「最終的には蒼弥が決めることだけど、地元の中学校へ行くなら、アイドルのお仕事は難しくなると思うよ?理由は、お友達だけなの?」
「…………Aと離れたくない」
「Aちゃん、いつも蒼弥の側にいてくれたもんね……中学生になったら蒼弥は男の子だから、今度はAちゃんを守ってあげないとね」
「俺が、Aを守るの?」
「そう、強くかっこよくなって、Aちゃんが蒼弥が側にいるから大丈夫って思える男の子になるの。
それは同じ中学校に行かなくても、蒼弥がアイドルを一生懸命に頑張っていたら、Aちゃんに伝わると思うよ」
おいでってママが両手を広げる。
少し、恥ずかしかったけど
俺を抱き締めたがっているのが分かったから
ママに抱きついた。
「蒼弥はどうしたい?」
「俺は……」
俺にしかなれないアイドルになりたい
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作者名:大宮さくら | 作成日時:2020年4月21日 22時