愛をこめて騒ごう (ページ38)

今日:13 hit、昨日:13 hit、合計:78,371 hit

・ページ38

そうこう俺が悩んでる間にも、夏のイベントに向けての練習が増えてきた。

今年は六本木で、東京B少年と初めてメインを務める。
俺たちHihijetsにとって、一大事な仕事だった。

振り付けもやらせてもらったし、ラップの歌詞も書かせてもらった。
仕事も順調で、褒めてもらえる事も多くなっていった。

イベント関連の仕事が連日続いていた時に、昔からお世話になってるカメラマンさんに言われた。

「猪狩くん、最近変わったよね」

「ありがとうございます！」

「恋、してるでしょう？しかも順調」

「そんなことないですよー！」

「16歳は今しかないから大切にね。写真は、嘘つかないよ」

そう言ってカメラマンさんが数枚の写真を見せてくれた。

僕も見ていい？
隣にいた作ちゃんが椅子を寄せてきた。

カメラマンさんが見せてきたのは4枚。
一年前の俺
今年の4月の俺
１ヶ月前の俺
今さっき撮った俺

「嘘でしょ…これ、がりさんすごいね」

作ちゃんが真面目に感心する。

そういう俺も、正直びひった。
こんなにも違うものなのかと
驚いた。

「一年前と今日の猪狩くんの違いは、明らか成長。誰がどう見ても成長」

確かに一年前の俺は、おまんじゅう。
ほっぺたプニプニだし、髪型ももっさりしてる。
まだ、少年から抜け出せてない。

「じゃあ、これは？4月と先月、そしてさっき」

作ちゃんが、ニヤニヤしながら肘でつついてくる。

カメラマンさんが、ウインクしながら小声で教えてくれた。

「安心して、多分ね大人の人はみんな気がついてるよ。でも、事務所の人から何も言われないでしょ？」

大きく頷いた。

「猪狩くんがいい恋をしていて、それが君の成長と魅力になってるからだよ。きっとね、ファンの子も猪狩くんがかっこよくなってきたって騒いでるから」

じゃあね、とカメラマンさんは仕事に戻って行った。

確かに、最近のファンレターでよく目にするようになっていた
『かっこいい』という言葉
それがすごく嬉しかったのも事実で、自分の自信にもなっていた。

「良かったね、がりさん」

静かに作ちゃんが言った後、俺の背中をバシッと叩いた。

「いってぇ」

「気合い、入ったでしょ？」

何のだよ…と言いかけてやめた。
作ちゃんを侮ってはいけない。

きっとお見通しだ。