・ ページ36
一度
言葉にしてしまうと
想いは止まらない。
「あのね、あのね」
私の分かりにくい言葉を一生懸命に聞いてくれる蒼弥。
『うんうん』って頷く顔も
『ごめんな』って眉毛を下げる顔も
『バカだな』って笑いを堪えて強く口を閉じてる顔も
全部すきって伝えていいんだ。
「俺さ…アイドルじゃん」
ひとしきりの私の話を聞いた後、蒼弥が真面目な顔で話し出す。
「メンバーのみんなと叶えたい夢があって、その夢は絶対にファンの子たちとも一緒に叶えたいんだよ。だから…」
「うん」
「Aのことは大切だけど、全ての気持ちに応えられるかっていうと、それは無理だと思う。我慢……させることもあると思う。でも、それでも一緒にいたいから、信じて?」
それは、″アイドル猪狩蒼弥″を好きでいいのかっていう
私の気持ちの答えになった。
「アイドルの蒼弥も、好きでいていい?」
「いいよ」
「幼馴染みの蒼弥も?」
「もう、幼馴染みじゃないだろ」
「何?」
「俺の女」
ゆっくりと近づいてくる蒼弥が
今までよりも何倍もかっこよく見えて直視できない。
「もう、手加減しないからマジで」
キスされる
そう思って身構えていた私の期待を裏切って
ニヤリと笑った蒼弥が寸前で動きを止めた。
「こんな顔見せるのは俺の前だけな」
おでこにキス
続いて右の頬にキス
「…恥ずかしいんだけど」
私の抵抗もむなしく
左の頬にキス
「好きだ」
耳元で聞こえた蒼弥の声は
今まで聞いたこともない甘さと誘惑を含んでいた。
172人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:大宮さくら | 作成日時:2020年4月21日 22時