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「え?嘘でしょ?」
帰り道
話が盛り上がってしまった私達。
お姉ちゃんが寄っていきなよ!と言ってくれた言葉に甘えて、お部屋にお邪魔することにした。
「本当……蒼弥とは付き合ってないよ?」
またまた!って
お姉ちゃんがふざけてくるけど、本当のことだから仕方ない。
「本当に?」
「うん、お姉ちゃんに嘘ついてもしょうがないし…」
あのバカ弟がって呟きながら、私を見る。
「昨日の夜、真剣な顔して蒼弥が部屋に来るから、何事かと思ったの。
しばらくAと一緒に駅から家まで帰って欲しいって頭下げてくるから……てっきり…」
「ごめんね」
「謝るのはこっちだよ、Aちゃん」
辛いよね、ごめんねってお姉ちゃん
蒼弥と同じように、眉毛をめいいっぱい下げて困った顔で謝ってくる。
そのお姉ちゃんの姿を見ていたら
今まで我慢していたこととか
秘密にしてたこととか
いろんな想いが胸の中で広がって
本当は
言えない気持ちを
聞いて欲しくて
「蒼弥のこと、好きなんでしょ?」
蒼弥と同じ眉毛と瞳で
優しくお姉ちゃんが聞いてくるから
「すき………蒼弥がすき」
初めて
言葉にしてしまった。
そしたら
涙が急に出てきて
それを見たお姉ちゃんが、いいよって
我慢して偉かったねって
何も言っていないけど
ちゃんと分かってくれた。
それが
嬉しくて嬉しくて
蒼弥を好きでもいいんだって認めてもらえた気がして
また涙が溢れてきた。
遠くでカタンって音が聞こえたけど
目の前のお姉ちゃんの目にも涙が見えたから
慌てて「どうしたの?」って聞いたら
蒼弥もAちゃんも、私の可愛い兄弟だから
幸せになってほしいって言い出すから
また
どうしていいか分からなくなる
「アイドルしてる蒼弥も
小さい頃から一緒の蒼弥も
私にとっては両方おんなじ蒼弥なんだけど、でも
アイドルしてる蒼弥に、私の好きは伝えちゃいけないと思ってたの」
「蒼弥は何て?」
「言ったことないから」
分からない。
蒼弥が、どう思っているのか。
何を考えているのか。
「Aちゃん」
顔をあげるとお姉ちゃんがすごく綺麗な顔してた。
「気持ちはね、言葉にして相手に伝えないとダメ。
お互いの気持ちをちゃんと共有することで、一人じゃなくて二人になるんだよ。
一人よりも二人のほうが、すごく幸せだよ?」
その台詞は、もちろん私に言ったものだと思う
けど
お姉ちゃんの目線は部屋のドアの向こうにあった。
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作者名:大宮さくら | 作成日時:2020年4月21日 22時