おやつのじかん (ページ6)

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私-6 ページ6

私の目の前にいるのが、あの伊野尾慧だと実感がわいてきたのは、チョコレートケーキを美味しそうに食べてる彼の様子が、そのまま「めざましテレビ」だったから。

モグモグと、美味しそうに食べる伊野尾さんをまじまじと見てしまった。

整ったお顔。
長いまつげ。
綺麗な二重の大きな瞳。

私は、男の人でこんなに綺麗な人に出会ったことがない。

でも。

広樹くんと話してる彼は、どこにでもいる普通の男の人だった。

建築関係のお仕事をしている広樹くんの話を聞いて、すげぇなを連呼している伊野尾さん。

真子ちゃんが、私の隣で話し出す。

「Aは、最近どうなの？やっぱり春は忙しい？」

伊野尾さんが話をひろう。

「え？Aさんは、春が忙しいの？なんで？」

広樹くんが、早々に答えを言ってしまう。

「Aさん、先生なんだよ」

驚きの表情の伊野尾さん。
そっか、新学期だもんな…なんて言いながら、ニコニコと私に話しかける。

つられて私もニコニコしてしまう。

お店で見たとき、プレゼントを選ぶ優しい表情に理由も分からず嫉妬していた私だけれども。

今、そのときと同じ表情を私に見せてくれることを嬉しいと感じていた。

久しぶりに胸の奥がざわざわする。

広樹くんと真子ちゃんの赤ちゃんが、お昼寝から目を覚ましたあと、伊野尾さんが馴れない手つきで抱っこしている姿や。

そのあとも話が弾んで、結局夕御飯まで一緒に過ごしたことも。

今日限りの素敵な出来事として、全部覚えておこう。

明日からは、またいつもの日常が繰り返される。

そう必死で自分に言い聞かせないと、この夢のような時間に終わりが来ることが怖かった。