慧‐2 ページ2
お店を出たところで、携帯が友人からの着信を知らせる。
「もしもし、慧?もうすぐ来る?」
あのさぁ、とちょっと申し訳なさそうに話し始める。
どうやら、奥さんの友人も今日、友人宅に来ることになっていたらしい。
訪問時間も同時刻。
俺の仕事柄、気まずかったら予定をずらした方がいいかな?という相談だった。
一瞬、不安な気持ちになったけど、限られたスケジュールだったし、何より友人夫婦の赤ちゃんに会いたい気持ちが強かった。
「すっごいいい人だから、大丈夫だと思うよ」
友人の言葉を信じることにした。
大学時代からの友人夫婦は、俺の友人の中でも特に仲がよくて、なにかとつるんで行動してた。
俺がジャニーズ事務所のアイドルってことで、側に寄ることさえ遠慮がちだった同級生の中で、一番最初に声をかけてくれたのがこいつだった。
そんな友人に好きな女の子ができて。
相談のるよって言いながら朝まで居酒屋でバカ騒ぎして。
好きって言っちゃえよって、背中おしたらすんなり上手くいっちゃって。
卒業して6年。
結婚するんだって報告から、あっという間に子供ができて。
なんだか不思議な気持ちになる。
そりゃ、俺だって。
アイドルだけど健全な男の子なわけで。
彼女がいた時だってあるし。
女の子からキャーキャー言われたら悪くは思わないし。
恋、したいなとか思うこともある。
でもね。
アイドルやらせてもらってるくらいだから、やっぱり、自分で言うのもなんなんどけど。
顔もそこそこよくて。
たくさんの可愛い人たちとお仕事させてもらって。
自分をよく見せようということに対して、ストイックに取り組んでる人たちの中にいると。
女の子がどうしたら喜んでくれるのかとか、わかっちゃったりして。
どこかであざとく計算しちゃってる俺がいる。
俺のことを好きだと言ってくれる女の子に対しても、本当に?って疑っちゃう。
どんなところが、好きになってくれたの?
顔?スタイル?性格?
……まあ、こんな風に考えちゃってる時点で。
なんとなく分かってはいたけど、恋ができるわけないよな。
恋ができなくても。
恋人がいなくても。
今の俺はとても充実しているから、大丈夫。
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作者名:大宮さくら | 作成日時:2018年4月13日 0時