STAGE～私は君を見つけます～ (ページ29)

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All right of Incident～小さい声で歌ってみてみた～ページ29

ライは、なにか良いことを言うことに必死で、頭の上に「？」の文字を出しているかのような顔をしながら、言う。
「…ハハ、あれが喧嘩言って言う？」
ヨシは、ライの言葉を不思議に思ったのか、笑いながらそう言った。
不思議と、ライからも笑い声が漏れだす。
「言わないよね！あれ、なんだろうね！ハハハ」
笑えばなにかが、変わるというわけではないのだろうが、笑っていれば楽になれるのだろうと思い、笑い続けていた。
「言わないよ…ハハハ！・・・・・これで良いのか…」
「いつものあなたがどこかへ消えて」
ヨシが、下を向きながら悲しそうにつぶやくと、ライは逆に上を向いて語り始める。
「私はあなたが遠くなってあなたを見つけ出したくて」
「・・・・・」
「みつけたら必ず連れてかえってくると」
「ライ……」
ライが語っていたのは、ヨシが歌うのをやめた後、ライが初めてボーカルとしてデビューした時の歌の歌詞。
「そんな思いのままあなたを追い続けていた」
「・・・・・」
「あなたの背中を追いながら涙が出そうになったけれど」
ヨシは、黙り続けたままうなづき続けていた。
「きっと戻ってくると信じてあなたを追い続けていた」
「きっ…と…いつかぁ…また……笑…い…合えるよう…に…」
ヨシは、辛いのを耐えながら小さい声で歌ってみてみた。
「ヨシ……」
「やっぱ歌うのは無理ね…。でも、どうしてかスッキリしたよ」
「歌うのは気持ちもの。口パクでもなんでも、歌っているのは気持ちいいもの」
ライは、ヨシに続いて言葉を発し始める。
「口パクで歌うってのはどう？ヨシがさ口パクで、ギターボーカルのふり」
「嫌よ、そんなの～。アタシ、女じゃないもの」
そう答えるヨシの口調は、いつものヨシの口調に戻っていた。
心の中で「口調はオカマな癖に」とツッコミを入れながら、ライはそんなヨシをニコニコと見ていた。
「辛くなったなら言ってほしい。仲間にちゃんと言ってほしい。今みたいに対策考えられるじゃん」
「うん。ごめん」
「謝らないでって。ほら、病院に戻ろう？きっと...きっと大丈夫だから」
調子を取り戻したヨシと共に、ライはカイの病室へと戻っていく。
戻ってなにになるのかなんて、同時は全く考えていなかったけれど、多分ライも、カイと共にいたかったのだろう。

好きだったのかもしれない。

カイが退院してからすぐに、カイの要望でライブを開催することに決まる。