6 ページ6
【紫耀】
言い過ぎたことは、部屋に戻ってからすぐにわかった。
Aは何も悪くない。
体の関係を持つことがいけないことだとも思わない。
俺も俺の周りの奴らも、Aの年齢の時にはもう経験していたし。
なのにAがどんどん手の届かない所へ離れていってしまう現実が受け入れられなくて、つい八つ当たりしてしまったんだ。
"独占欲の塊だな"
少し前に廉に言った言葉。
今の俺を知ったら、廉はその言葉をそっくりそのまま俺に返してくるんだろうな。
「紫耀…」
ドアの向こう、数回のノックの後に聞こえるのは遠慮がちに俺を呼ぶAの声。
「入っていいよ。」
ベッドから起き上がり俺がそう答えると、ゆっくりドアが開き、不安そうな顔をしたAが静かに入ってきた。
「紫耀…」
「さっきはごめん。」
「え…？」
先に俺の口から謝罪の言葉が出たことに、Aは拍子抜けしたような顔をする。
「言い過ぎたなって反省してたとこ。あんな風に怒ってごめんな？」
もう一度謝って立ち上がり、頭をポンポンと軽く撫でると、Aは大きく左右に頭を振って、溢れ出てきた涙を拭う。
「あーもー泣くなって！俺が悪かったって。
ちょっと心配になっただけなんだよ…ほら…子供できちゃいましたーとかさ？
まぁでも廉はその辺しっかりしてそうだし…うん、いいから。」
"心配"
そう言うしかなかった。
「紫耀…私…廉君と付き合ってて…いいのかな？」
だってほら、そう言わなきゃ、俺はAが掴んだ幸せを奪ってしまうから。
「は？何言ってんの。いいに決まってんだろ？」
「でも……紫耀、悲しそうだよ？」
"離れていかないで"って言ってしまったら、きっとAは何だって手放してしまうんだ。
せっかく掴んだ幸せだって、手放してしまうんだ、きっと。
今のAにとっての家族は俺だけで、
帰る場所がなくなる怖さを、Aは知っているから。
そんなAの弱みにつけこむようなことはしたくない。絶対に。
「ばーか。悲しくなんかねーよ。心配なだけ！そんなこと言ってたら廉が泣くよ？」
「うん…ごめんね…ありがとう…」
誰か教えてくれよ。
もし、
もし俺たちが普通の兄妹みたいに、家族としてずっと一緒に暮らしてきてたら、
そしたら妹にこんな拗らせた感情抱くことなんてなかったのかな？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
P(プロフ) - ななみさん» 大変有り難いお言葉をありがとうございます。妹だけでなく、紫耀君と廉君の関係性も大切に書くよう意識しているので、そう言っていただけると非常に嬉しいです。まだまだ至らぬ点もございますが、引き続きよろしくお願い致します。 (2019年5月28日 6時) (
レス) id: 6d17b4bef7 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - キンプリの仲間の距離感が好きです。紫耀くんの包み込むような優しさ、廉君のひたむきな優しさ。どちらも素敵でドキドキします。続きをお待ちしてます。是非読ませてください。 (2019年5月27日 23時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：P | 作成日時：2019年3月7日 20時
