31 ページ31
【紫耀】
「お前何拗ねてんねん。」
「は？」
開けていたドアを一旦締めたかと思うと、呆れたとでも言うような口調で浴びせられた廉の言葉に、思わず耳を疑う。
「やから拗ねんなって。」
「別に拗ねてねーよ！」
拗ねてる？俺が？
そんなことない。
ただ俺はAの気持ちを尊重してるだけで…
「拗ねてるやん！来なくていいって言われたから行かへんとか、拗ねてるとしか思えへんのやけど。」
廉の言葉がズキンと心に突き刺さって、睨むように見ていた目を咄嗟にそらす。
「何が任せるやねん！ホンマに任せる気なんかないくせに。
紫耀はAを誰かに託すことなんか絶対にできひん。
Aに突き放されたって、絶対離れられへん。お前は一生過保護な兄貴のままや。
そんなん自分でもわかってるやろ？
やのに理解ある兄貴のふりして中途半端に身引こうとすんなや。」
反論の余地がない。
全部、廉の言う通りだ。
本当は任せる気なんかないくせに、勝手に拗ねて、都合良くその場だけ廉に動いてもらおうとしてた。
「俺…」
つい何もかも昔のままだと思ってしまうけど、
Aはもう子供じゃない。
俺に飛びついてきたり、後ろをくっついてきていたあの頃とはもう違う。
19歳だもんな。
そりゃあ変わる。
子供のままなわけがない。
見た目も変わったし、中身も変わったし、家庭環境だって…すっかり変わった。
だけど "変わってしまった" とは思わない。
それらの変化は、どれも成長と呼べるものだと思うから。
そして俺は、相も変わらずAを可愛いと思い続けている。
いいじゃないか、それで。
それが俺の全ての行動理由なんだ。
Aがどうとか、何を言われたとか、そんなのは関係ない。
いつだってなんだって、俺はAが可愛くて、何より大切だから…
だから、
Aがどこに行ったって、どこに隠れたって、
誰より早く探し出して、誰よりも早く連れ帰ってやる。
「誰が迎えに行ったって、Aが帰るところは紫耀のところなんやから。お前が行かんでどうすんねん。」
そう言うと廉はもう一度ドアを開け外に出る。
きっと、廉はわかってるんだろう。
俺がどういう答えを出すかなんて、廉にはお見通しなんだろう。
「俺も行く。」
ドアを開けると同時に感じる秋の夜風が、やけに心地良く思えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
P(プロフ) - ななみさん» 大変有り難いお言葉をありがとうございます。妹だけでなく、紫耀君と廉君の関係性も大切に書くよう意識しているので、そう言っていただけると非常に嬉しいです。まだまだ至らぬ点もございますが、引き続きよろしくお願い致します。 (2019年5月28日 6時) (
レス) id: 6d17b4bef7 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - キンプリの仲間の距離感が好きです。紫耀くんの包み込むような優しさ、廉君のひたむきな優しさ。どちらも素敵でドキドキします。続きをお待ちしてます。是非読ませてください。 (2019年5月27日 23時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：P | 作成日時：2019年3月7日 20時
