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【紫耀】
「紫耀っ!」
エントランスを出て駐車場に向かおうとしたところでそう呼ばれ振り返ると、タクシーを背に走ってくる廉がいた。
「どうした?」
「どうしたちゃうわ!Aが帰ってへんって言うから心配して来たんやろ!」
「あーさっきやっと連絡とれてこれから迎えに行くとこ。」
「はぁ?!お前それはよ教えろや…」
「いやいや言うつもりだったから!Aと連絡とれたのが本当についさっきだったんだって!」
「まぁええわ…で?どこにおるって?」
「公園。大通り突き当たったとこの。あんなとこまで歩いて行ったんだって。」
そう答えながら駐車場へ足を進めると、廉は当たり前のように俺の後をついてくる。
「え?!歩いて?!しかもこんな時間まで帰って来んとか…おかしいやん。
俺が今日会った時は変わった様子なかったんやけど、紫耀なんか心当たりないん?」
「ねーよ、全く。」
「でも絶対なんかあったんやんな?」
「わかんねー…つか乗んないの?」
鍵を開けて俺が運転席に座ろうとしても側で立ったままの廉にそう投げかけると、
「俺も行ってえん…?」
遠慮がちに、でもしっかりと力の込もった目で俺を見つめる。
Aのこと心配して来てくれた奴を追い返したりするわけない。
そのくらい廉だってわかってるくせに。
「ダメって言ったら来ねーのかよ?」
長年の付き合いだ。俺だってこういう時廉がどういう答えを出すかなんてことは大体わかる。
わかってるのに、訊いてしまう。
訊きたくなる。
「いや、行く!来るなって言われてもタクシーで後つけて行くし!」
俺は、お前の出す暑苦しくて真っ直ぐな答えが好きだから。
「だったら早く乗れよ。」
そう言うと廉は急いで反対側へまわり、助手席に乗り込む。俺は廉がシートベルトを締めたのを確認してアクセルを踏んだ。
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P(プロフ) - ななみさん» 大変有り難いお言葉をありがとうございます。妹だけでなく、紫耀君と廉君の関係性も大切に書くよう意識しているので、そう言っていただけると非常に嬉しいです。まだまだ至らぬ点もございますが、引き続きよろしくお願い致します。 (2019年5月28日 6時) (レス) id: 6d17b4bef7 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - キンプリの仲間の距離感が好きです。紫耀くんの包み込むような優しさ、廉君のひたむきな優しさ。どちらも素敵でドキドキします。続きをお待ちしてます。是非読ませてください。 (2019年5月27日 23時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:P | 作成日時:2019年3月7日 20時