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Aと一緒に過ごす2時間はあっという間やのに、この2時間は地獄のように長く感じた。
家に戻るのも面倒で、行きつけの服屋を何軒かまわってみたけど、
今頃Aはあのサエキって奴らと飯食うてんのか思ったら服選びに全然集中できひんくて、結局何も買わずにただ店内をフラフラしただけやった。
"店の前着いた。"
そう送ったものの、なかなか既読にならへんメッセージに痺れを切らして電話をかける。
「もしもし?」
数コールで君の声が聞こえて、すぐに用件を伝えようとしたけど、電話越しに数人の賑やかな声が聞こえてきた途端、
今Aがおる場所がどんな雰囲気なんかが嫌でも頭に浮かんできて、俺は口を開きかけたまま固まってしまった。
「もしもし?廉君…?」
そんな俺を不思議そうに呼ぶ君の声で我に返った俺は、一刻も早くその場所から離れて欲しくて、
「もう店の前おるから。はよ来て。撮られたらヤバい。」
なんてもっともらしいことを言って君を急かした。
「お待たせ。ごめんねっ…ライン気付かなくて…
迎えに来てくれてありがとう。」
言われた通りホンマに急いでくれたんやろう、鞄とは別に財布を手に持ったまま慌てた様子で出てきた君が、キョロキョロと周りを確認してから後部座席に乗り込んできた。
「うん、それはええけど、なんで後ろ?」
行きは助手席に乗ってきた君が、なんで後部座席に乗るのかが気になって訊くと、
「え、だって…撮られたら大変でしょ?」
と不安そうな表情を向けてくる。
そんなのは君を急かすためのとってつけた言い訳みたいなもんやのに…
それを真っ直ぐ受け止めて忠実に従う純粋な君の目を見続けることができず、視線を逸らし、前を向いて車を発進させる。
素直。
紫耀もAも兄妹揃ってホンマに素直で、それがええ所やと思うんやけど、こんな時はその素直さが俺を苦しめる。
「べつに…撮られるとかそんなんAが気にすることちゃうやん。俺がちゃんと気をつければええだけの話やから。
やから…そういうのやめてくれへん?」
苦しいから余計にとんがって、君の気遣いにありがとうの一言も言えへんくなる。
「あ、うん…ごめんね。ありがとう。」
あぁ、俺、この数分間に何回君に謝らせてんのやろ。
何回ありがとうって言ってもらってんのやろ。
俺を苦しめてるのは、君の素直さじゃなくて俺自身…か。
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P(プロフ) - ななみさん» 大変有り難いお言葉をありがとうございます。妹だけでなく、紫耀君と廉君の関係性も大切に書くよう意識しているので、そう言っていただけると非常に嬉しいです。まだまだ至らぬ点もございますが、引き続きよろしくお願い致します。 (2019年5月28日 6時) (レス) id: 6d17b4bef7 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - キンプリの仲間の距離感が好きです。紫耀くんの包み込むような優しさ、廉君のひたむきな優しさ。どちらも素敵でドキドキします。続きをお待ちしてます。是非読ませてください。 (2019年5月27日 23時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:P | 作成日時:2019年3月7日 20時